生命線を欠いたバルセロナ=明暗を分けたエル・クラシコ

清水英斗

A・サンチェス投入で流れを引き寄せたが

レアル・マドリーは献身的な活動量がポイントとなり、バルセロナはチャレンジが少なかった 【Getty Images】

 一方、バルセロナはレアル・マドリーの裏のスペースを突こうとするチャレンジが少なかった。前述したように、レアル・マドリーはボランチ2人がディレイして、前線がプレスバックする時間を稼いでいるのだから、それが間に合わないスピードやコンビネーションで縦に仕掛ければいい。しかし、メッシの動きは少なく、シャビも足元でもらおうとする傾向が強い。イニエスタがときどき裏へ飛び出す姿勢を見せるものの、周囲がついてこないので単発に終わってしまっていた。さらに、チアゴとシャビのスペースがかぶる場面も散見された。

 後半24分、ジョゼップ・グアルディオラ監督がシャビに代えてアレクシス・サンチェスを投入すると、効果は明らかに表れた。A・サンチェスがロングキックをマイボールにすると、一列下がった位置からメッシがドリブルを開始。シャビ・アロンソを置き去りにし、ケディラをかわすと、今までのバルセロナには存在しなかったゴールへの迫力がわき上がる。サンチェスがディフェンスラインを斜めに横切って飛び出してスペースを空け、中央へ走り込んだイニエスタがメッシのドリブルのこぼれ球を軸足の裏からワンタッチパス。テジョのシュートは外れたが、最後はA・サンチェスが押し込んだ。このような厚みのある攻撃が最初から見られていれば、もっとレアル・マドリーを脅かすことができたはずだが、A・サンチェスがケガでスタメン出場できないなど、重要な駒を欠いた不運もあった。

 また、レアル・マドリーはサイドバックのファビオ・コエントランとアルベロアがほぼマンツーマンのような形で両ウイングのダニエウ・アウベスとテジョをマークしていたので、センターバックとの間にスペースが空いていた。何度かスルーパスに対してテジョが飛び出したが、このようなチャレンジも回数としては物足りないものだった。テジョに関してはスピードと突破力は魅力的だが、ポジショニングやプレッシング、シュート技術に関しては、まだバルセロナのレベルに達していない。レアル・マドリーの2点目のシーンのきっかけを作ったパスミスといい、その後にプレスするべき選手を見失ったことといい、やはりベストメンバーに比べると力の差は大きい。

 選手層は比較的厚いと思われる両チームだが、このレベルになると、ほんのわずかなミスが失点や敗退につながってしまう。戦術レベルが高いがゆえに、ターンオーバーも簡単ではない。それを再認識させてくれた試合だった。

<了>

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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