新旧王者が繰り広げた優勝争い、戦略失敗の可夢偉は「当然の結果」=F1バーレーンGP

吉田知弘

11番手から追い上げたライコネン

激しい優勝争いを繰り広げたベッテル(中央左)とライコネン(左端) 【写真:ピレリ】

 2012年F1世界選手権第4戦バーレーンGPは22日、バーレーン・インターナショナル・サーキットで決勝が行われ、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)が今季初勝利、通算22勝目を挙げた。小林可夢偉(ザウバー)は13位でゴールした。

 レースは今季初のポールポジションを獲得したベッテルが好スタートを決めて、1周目から後続を引き離しにかかった。昨年も序盤で後続を引き離して逃げ切るというレース展開で多くの勝利を手にしたベッテル。今回も同じように序盤から大量リードを築く。しかし、2連覇中の現王者の独走を許さなかったのが、07年王者のキミ・ライコネン(ロータス)だった。

 11番手からスタートしたライコネンは1周目で7位まで順位を上げると、その後もジェンソン・バトン(マクラーレン)、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)らを次々と追い抜き、24周目には2位まで浮上。さらに追い上げの勢いは止まらず、33周目にはベッテルの0.917秒差まで迫った。そして、ここから一瞬も気を抜く事が許されない、ハイレベルな“新旧王者の対決”が始まっていく。

 直線スピードが比較的速かったライコネンが駆るロータスのマシン。さらに1秒以内でDRS(可変リアウイング)も使えるため、メインストレートで何度かベッテルの横に並びかけた。強引にブレーキ勝負に持ち込もうとせず、並びかける事で存在感をアピールしてプレッシャーをかけていく。これによりベッテルが焦ってミスを犯すことを待っていた。

劣勢を跳ね返したベッテルとレッドブル

ピットストップでベッテルとライコネンの差は広がった 【写真:ピレリ】

 しかし、これまで多くの優勝を勝ち取ってきたベッテル。ライコネンからの強烈なプレッシャーに動じることなく、周回を重ねた。

 ライコネンが優勢の状態で進んできたレースだが、3回目のタイヤ交換を機に流れが一気に変わる。39周目、両者が同じタイミングでタイヤ交換のためピットイン。レッドブルはじん速な作業で21.800秒でベッテルを送り出す。これに対してロータスは少し手間取り22.597秒。両者の間隔は2.232秒に広がった。

 後方からのプレッシャーが解けたベッテルは、ここで一気にスパート。41周目にレースのファステストラップとなる1分36秒379を記録し、ライコネンとの差を3.498秒にまで広げていく。ライコネンもF1復帰後初優勝を目指してペースを上げるが、結局追いつくことができず、ベッテルが今季初勝利を手にした。

 わずかに届かなかったライコネンだったが、09年イタリアGP以来となる表彰台を獲得。11番手スタートから怒とうの追い上げを見せ、存在感を大いにアピールするレースとなった。

 後方からプレッシャーをかけ、相手のミスを誘う走りでトップ奪還を目指したライコネンと、劣勢な時は辛抱強く我慢し、チャンスがきた時に一気に攻めて勝利を手にしたベッテル。新旧王者がそれぞれの持ち味を存分に引き出した対決は、ベッテルに軍配が上がった。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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