スタートの出遅れが響いた可夢偉、ロズベルグが7年目で初優勝を飾る=F1中国GP

吉田知弘

優勝争いを演じたバトン(左)とロズベルグ(中央左) 【写真:ピレリ】

 F1第3戦中国GPは、ニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)がポール・トゥ・ウィンを飾った。2006年のF1デビューから7年目。毎年「優勝候補」として名前が挙がってきたロズベルグがついに初優勝を飾った。

 今回はロズベルグと5番グリッドから2位に浮上したジェンソン・バトン(マクラーレン)の優勝争い、そして自己最高位となる3番手からスタートした小林可夢偉(ザウバー)を中心に混戦となったレースを振り返っていく。

2ストップのロズベルグvs.3ストップのバトン

 ポールポジションのロズベルグは好スタートを決め、一気に2位以下を引き離していく。一方、僚友のミハエル・シューマッハは2番手スタートだったが、13周目にマシントラブルでリタイヤを喫してしまう。これにより開幕戦を制したジェンソン・バトンが2位に浮上。ロズベルグvs.バトンの優勝争いとなった。

 中国の上海インターナショナルサーキットは、高速コーナーが多くタイヤに負担がかかりやすいコース。多くのチームがタイヤ交換を3回行う作戦を選び、2位を走るバトンも3回交換作戦で勝負をかけてきた。しかし、トップを走るロズベルグは2回交換の作戦を選択。この戦略の違いのメリットとデメリットは以下のようになる。

ジェンソン・バトン(タイヤ3回交換作戦)

 3回交換作戦は、レース中に3度新しいタイヤを投入できるため、そこまでタイヤの寿命を気にすることなく、全力で走ることができる。しかし、タイヤ交換3回分のピット作業時間(タイムロス)が発生するため、コース上でいかに速く走って、ライバルより1回多い作業時間を稼げるかがポイントとなる。

ニコ・ロズベルグ(タイヤ2回交換作戦)

 一方、2回交換作戦のロズベルグは、バトンと異なりピット作業2回分のタイムロスで済むため、レース中に何度かバトンに先行されても、彼の3回目のピッ ト作業所要時間内のタイム差で走っていれば最終的に逆転することが可能だ。しかし、デメリットになるのはタイヤの寿命。どうしてもタイヤをセーブする走りになるため、ペースが遅くなってしまう。

 コース上で速く走れることを選ぶか? ピット作業時間の少なさを選ぶか? 今回は意外な形で決着がついた。

バトン、3回目のタイヤ交換で痛恨のミス

 レース前半から順調なペースでトップを死守していたロズベルグだが、ロングランでペースが伸びず、34周目の2回目のタイヤ交換が終了した時点でバトンに9.580秒の先行を許す。ここまで両者ともに計画通りの展開。注目はバトンが3回目のタイヤ交換を終えた時に、ロズベルグが何秒前方にいるのか、ということだった。

 ところが、38周目にピットインしたバトンは左リアタイヤの交換作業に手間取り、予想以上にタイムをロスしてしまう。これでロズベルグに先行を許しただけでなく、後方で2回交換作戦で走っていたフェリペ・マッサ(フェラーリ)らの集団に引っかかってしまった。結果として、トラフィックに巻き込まれたバトンはペースを上げることができず、ロズベルグに独走を許してしまった。

 後方からの追い上げがなくなり、一気に楽になったロズベルグ。ミスのない走りを最後まで続け、ついに悲願の初優勝を決めた。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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