“雨”を味方につけたアロンソが大荒れのGPを制す=F1 可夢偉はマシントラブルで無念のリタイア

吉田知弘

トップを守りきり、優勝を飾ったフェルナンド・アロンソ(右から二人目) 【Getty Images】

 2012年のF1第2戦マレーシアGP決勝は、東南アジア特有のスコールで赤旗中断になるなど大荒れの展開となった。フロントローからスタートしたマクラーレン勢は後退。フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が今季初優勝を飾り、若手のセルジオ・ペレス(ザウバー)が2位表彰台と大健闘を見せた。内容盛りだくさんとなったレースを振り返っていく。

ウエットコンディションで抜群の速さを見せる

 スタート直後から振り出した大雨で赤旗中断となった決勝。約50分間の中断を余儀なくされ、現地時間の17時15分にセーフティカー先導でレースが再開。雨脚が弱まった14周目からリスタートが切られた。すると、これまで絶好調だったマクラーレン勢はジェンソン・バトンが他車との接触でウイングを破損、ルイス・ハミルトンもインターミディエイトタイヤに交換した際にピットロードの混雑でタイムロスしてしまう。こういったライバルたちの不運にも助けられ、16周目にアロンソがトップに浮上。その後もウエットコンディションで苦しむ各車を尻目に後続に対して最大7.795秒のリードを築く。
 これまでドライコンディションで速さを見せられなかったフェラーリチームとアロンソだったが、大雨を味方につけてトップを独走し、レース後半を迎えた。

怒とうの勢いで迫ってきたペレスにも全く動揺せず

 このままアロンソの今季初優勝は確実かと思われたが、2位に浮上した期待の若手ペレスが毎周1秒詰めてくる怒とうの追い上げを見せ、40周目には7.7秒あった貯金がなくなってしまう。ここで路面も乾き始め、アロンソはいち早くドライタイヤを求めてピットイン。1周遅れてタイヤ交換したペレスを再び引き離すが、初優勝をあきらめないペレスは再びアロンソを追い詰めてくる。

 7秒あったリードを2回も追い上げて背後に迫ってくるペレス。普通のドライバーなら、その勢いに圧倒されミスを犯してしまうケースも少なくないが、2度の世界王者を経験しているアロンソは冷静だった。勢いよく攻めてくるペレスに対して、全く動揺せずトップをキープする。逆に優勝争いの経験がないペレスは勝負を焦り、50周目の14コーナーでミスを犯しコースアウト。自らのミスで三度アロンソに逃げられてしまい、勝敗が決した。

 開幕前のテストでは不調がうわさされていたフェラーリチーム。前回のオーストラリアGPでも予選でQ3進出を逃すなど、アロンソ自身も厳しいレースを強いられた。しかし、今回のマレーシアでは“雨”という要素を味方につけ、勝負どころでは一気に攻め、逆に劣勢に立たされた時には慌てることなくトップを死守。巧みなレース運びで今季初優勝を手にした。

可夢偉はマシントラブルでリタイアに終わる

関係者と話し込む小林可夢偉。相棒のペレスとは明暗がはっきりと分かれる結果となった 【写真:ザウバー】

 一方、開幕戦で6位入賞と幸先の良いスタートを切り、マレーシアGPでもポイント獲得が期待されたザウバーの小林可夢偉にとっては厳しい週末となってしまった。予選ではQ2に進出するもうまくタイムアップできず17位に終わると、決勝でもマシンバランスに苦しみ、後方でのレースを余儀なくされた。

 途中にファステストラップを記録するなど、インターミディエイトタイヤが温まったレース中盤に速さを見せたが、ブレーキトラブルにより46周でリタイアという結果に終わってしまった。僚友のペレスがアロンソと優勝を争う大活躍を見せただけに、なおさら悔やまれるレースとなったことだろう。フリー走行2回目ではギアボックスに問題が生じ、予選の後にはサスペンションの故障が発覚。そして決勝ではブレーキトラブルとペレスとは対照的にマシントラブルに苦しんだレースとなった。

 今回、可夢偉にとっては不完全燃焼の結果となってしまったが、ザウバーのマシンの戦闘力が高いということは証明された。次回の中国GPでは、優勝争いに絡むような奮起に期待したい。

<了>
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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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