世界へ――武豊のドバイ戦記
トゥザヴィクトリーとのコンビで挑んだ2001年のドバイWC 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】
武豊と言えば日本が世界に誇る名手。ドバイでの知名度も高く、現地の競馬ファンも当たり前のように彼の名前を知っている。それもそのはず。ここまでの武豊のドバイミーティングでの通算成績は15戦3勝。ドバイWCでの勝利こそまだだが、シーマクラシック、デューティフリー、ゴドルフィンマイルと名のあるレースで勝利を挙げているからだ。そんな武豊のこれまでのドバイでの活躍を振り返ってみたい。
2001年は特別な年……ステイゴールド&トゥザヴィクトリー
そして、初めてドバイミーティングに参戦した2001年は彼のドバイでの活躍を語る上で必要不可欠な年となる。シーマクラシックでステイゴールドに騎乗。日本では“善戦マン”の異名をとっていたステイゴールドで、このときの英国大手ブックメーカーの単勝オッズでは下位人気。完全にドバイWCへ出走するトゥザヴィクトリーの帯同馬だと思われていたが、蓋を開けてビックリ。道中は中団待機策から直線で怒とうの末脚を披露。強烈な追い込みを見せると、最後はモハメド殿下が率いるゴドルフィンのファンタスティックライトとの壮絶な叩き合いを制して、いきなりのシーマクラシック制覇。日本調教馬としては初となるドバイでの勝利。もちろん武豊もドバイミーティングでの初勝利となった。
さらに彼の進撃は留まるところなく続く。この日のメーンであるドバイWCでは、通常ならば2、3番手からの競馬を得意とするトゥザヴィクトリーで意表を突く逃げ戦法に打って出た。これが予想以上にハマってトゥザヴィクトリーは気持ち良さそうに逃げる。最後は直線でアメリカのキャプテンスティーブにこそかわされたものの、2着に粘る好走を演出した。2001年以前にドバイWCへ挑戦した4頭の日本馬はレース中に故障したホクトベガを除くと全てが6着。それも勝ち馬に大きく引き離されての結果だっただけに、このトゥザヴィクトリーの2着は実に衝撃的であり、日本の競馬界にドバイ制覇という夢が現実のものとなる可能性があることを知らしめた。