大阪桐蔭・藤浪、“すごい”投球ではなく“勝てる”投球を目指して=自然体で臨む甲子園の初マウンド
冬場は股関節を柔らかくする練習に取り組み、投球に安定感が増した藤浪 【写真は共同】
藤浪晋太郎と大谷翔平(ともに3年)の『ダルビッシュ二世対決』
そんな見出しが出るようになり、いやが上にも注目を集める立場となった。
「注目していただけるのはありがたいですし、大谷君を意識しないことはない。でも僕と大谷君だけが戦うのではなく、大阪桐蔭と花巻東の戦い」と、当の藤浪はあくまでも自然体だ。
幾度も流した悔し涙
1年夏は大阪大会3回戦、主戦格で投げるようになった1年秋は近畿大会1回戦で敗れ、エースナンバーをつかんだ2年夏も大阪大会決勝で敗れた。昨秋の近畿大会も初戦で関西学院(兵庫)を2安打完封しながら、ベスト8で天理(奈良)に打ち込まれ、選抜当確と言われるベスト4を決めきれなかった。文字通りあと一歩で泣き続けてきたのである。
素質の高さに注目するプロのスカウトも「はまった時は凄いが、良い時と悪い時がはっきりしている」と現状の藤浪を分析している。恵まれた体から繰り出される140キロを超える直球、角度のある球。素人の目にも素晴らしい素質の持ち主であることは間違いない。しかし、その素質を100%生かしきれずにきた。
だが、悔し涙を幾度も流してきたことが、藤浪自身を一回りも二回りも大きくしてきたのも事実だ。周囲の大谷に関する質問にも、「彼にはセンスがあるが、自分にはそこまではない」とリスペクトした発言をできるようになったのも、そうしたこれまでの積み重ねがあったからだろう。
「大谷君に投球内容で負けても、チームが勝てればそれで良い」
成果は3月の練習試合でも表れてきている。解禁日の8日に行われた桜宮(大阪)戦では7回1失点。今季初完投だった16日の市立尼崎(兵庫)戦は3失点を喫したが、中盤以降はしっかりと修正した。投球にメリハリをつけ、失点はしても負けない。傍目にはもの足りないかもしれないが、これが投手にとって最も必要なことであろう。
だからこそ大谷と投げ合うであろう、本番でもスピードにのみこだわることはしない。
「大谷君に投球内容で負けても、チームが勝てればそれで良い。打者の大谷君に対しても、乗せてしまわないように気をつけたいが、例えば2死走者無しからのシングルヒットはOKくらいの気持ちでいます」と言葉を選びながら話してくれた。
近そうで遠かった甲子園のマウンド。17日の公式練習が雨で室内になり、またしてもマウンドはお預けになった。
『楽しみは本番で』という目で一端後にした甲子園。開幕日の21日、あらためてマウンドに上がる。大谷だけでなく、花巻東打線に対して……。
<了>
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