ザックが引き寄せた「悪くない」最終予選=W杯アジア最終予選抽選会を振り返る

宇都宮徹壱

グループBの5番目に回った日本

W杯アジア最終予選の組み合わせが決まり、報道陣の質問に答えるザッケローニ監督=9日午後、東京都文京区 【共同】

「おふたりともハンサムなジェントルマンです!」

 そう女性司会者に紹介されたのは、元イラン代表のメフディ・マハダビキアと、元日本代表の宮本恒靖であった。35歳の宮本は昨シーズンで引退。34歳のマハダビキアは、今も国内リーグのペルセポリスで現役を続けているようだ。7年前のワールドカップ(W杯)アジア最終予選では、敵味方に分かれて対戦したこの2人。それが最終予選のドロワーに選ばれるのだから、今さらながらに時の移ろいを感じずにはいられない。

 今回のドロー(抽選会)で日本とイランは、ともにポット2に組み込まれた。つまり日本はシードから漏れたわけである。ザッケローニが代表監督に就任して以来、一時は16試合負けなしでFIFA(国際サッカー連盟)ランキング13位まで上り詰めた日本。しかし、その後は北朝鮮とウズベキスタンに敗れ、最新のランキングでは33位まで急降下してしまう。今回のドローは、このランキングに従い、ポット1にはオーストラリア(20位)と韓国(30位)が組み込まれることとなった。

 ドロワーのマハダビキアが、最初に導かれたのはポット2。イランはグループAの2番目、日本はグループBの5番目となった。なぜ日本が5番目なのか。それは、来年ブラジルで開催されるコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)とアジア最終予選の日程がバッティングするからである。今回の予選では、それぞれのグループが5チームであるため、試合がないチームが毎節出てくる。5番目のチームは、最終節の試合がないので、コンフェデ杯にはバッティングしない。そのため、グループ内では2番目にランキングの高い日本は、FIFAのスケジュール優先で5番目に回ることになったのである。

 その後、宮本がポット5からオマーン、そしてポット4からイラクを引き、それぞれ日本と同組となった。先日、嫌な負け方をしたウズベキスタンを回避し、元日本代表監督のジーコ率いるイラクを引き当てたのは、さすが(?)日本代表OBである。最後に、ポット1の韓国がグループAに、オーストラリアがグループBに振り分けられ、最終予選の組み合わせがここに決した。

ランキングが入れ替わった日韓の明暗

 あらためて、ドローの結果を見てみよう(カッコ内は最新FIFAランキング)。

<グループA>
韓国(30)、イラン(51)、ウズベキスタン(67)、カタール(88)、レバノン(124)

<グループB>
オーストラリア(20)、イラク(76)、ヨルダン(83)、オマーン(92)、日本(33)

 こうしてみると、日韓の順位が入れ替わったのは、日本にとって非常にラッキーであったことが分かる。逆に韓国の関係者は、この結果に頭を抱えていることだろう。苦手意識のあるイラン、侮り難いウズベキスタン、成長著しいカタール、そして3次予選で敗れているレバノン。楽な相手はひとつとしてない。

 日本の場合はどうか。端的に言えば「悪くない」組み合わせである。ポット2になったことで、韓国かイランかという究極の2択は回避できた(しかもどちらとも当たらずに済んだ)。先月、ホームで敗れたウズベキスタンも、向こう側に行ってくれた。中東勢が3チーム入ったが、それは韓国も同じこと。オーストラリアは「隣国」とは言い難いが、時差がほとんどないのはありがたい。できれば、最もランキングが下のレバノンに来てほしかったが、そこまで望むのはバチが当たりそうだ。

 試合日程に関しても、日本は恵まれている。6月の3連戦は、3日にオマーン(ホーム)、8日にヨルダン(ホーム)、12日にオーストラリア(アウエー)。ホームで力が劣る2チームと対戦してペースをつかみ、3戦目のオーストラリア戦に臨むことができる。対するオーストラリアは、3日は休み、8日はアウエーでオマーンと戦う(3次予選で敗れた相手だ)。12日はホームとはいえ、時差と移動距離の負荷がかかることを考えれば、コンディション的にはむしろ日本のほうが有利と言えそうだ。この3連戦で勝ち点7以上を獲得できれば、その後の戦いをかなり優位に進めることができるだろう。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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