元FC東京社長・村林氏が語る「W杯開催に向けてするべきこと」

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

クラブ作り、W杯運営に携わってきた村林裕氏。現在は慶応大教授を務めている 【スポーツナビ】

 2月13日に開催された、東京都港区と日本ラグビー協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップに向けて」に、元FC東京社長の村林裕氏が登場した。
 地域密着を理念とするクラブ作りに尽力し、現在は慶応大教授を務める村林氏が、サッカー界の視点から、ラグビーW杯の自国開催に向けてするべきことについて語った。

「7年後」を意識した行動、強化を

 私は2002年のサッカーW杯で宮城地区のべニューコーディネーターを担当しました。世界的な大イベントで1地区の代表を務めたわけです。このとき私は48歳でした。2019年のラグビーW杯で48歳になる人は現在41歳ですね。41歳というと「若い」という印象があるかもしれませんが、実際には19年に中心となる人は今からその意識を持って行動することが必要になります。

 選手についてはどうでしょうか。7年後に中心となる選手は現在の18〜23歳だと思います。では、彼らをどう育てるか。
 私はラグビーが好きで、いろいろな意見を聞きます。この前は「やはりFW第1列はもっと体が大きい方が良いんじゃないか?」という声を聞きました。現在は大学ごとに、その大学が勝つためにベストな選手起用をして戦っていると思います。しかし、19年に向けて考えるなら、もっと全体で指針を持って強化した方が良いのではないでしょうか。例えば、FW第1列に180センチ以上の選手を集めて鍛えたり、サイズが足りない選手は大きい選手に負けない運動量やパワーが必要だと明確にすることで、強化の効果が変わってくると思います。

子どもたちの目をラグビーに向けさせるプロモーション活動が必要

 私はFC東京の社長をしていましたが、Jリーガーになるにはさまざまなルートがあります。クラブのジュニアユースからずっと同じチームに在籍してプロになった選手もいれば、高校、大学からJリーガーになる選手もいます。特別指定選手として学生をクラブで受け入れる制度もあります。
 ラグビーも世界で戦うために、さまざまな選手を獲得することが必要だと思います。中体連の部活動参加生徒を比較すると、野球が約28万人でサッカーが約24万人。ラグビーは約7000人です。差は確かにありますが、高校や大学からラグビーを始めた選手が日本代表になっていると聞きます。そう考えると、ほかのスポーツの選手を勧誘してラグビーに目を向けさせることが大事になります。中学生、高校生に対してプロモーション活動を行うことが、ラグビーの発展につながるのではないでしょうか。

 また、これは私が見つけ方が下手だったのかもしれませんが、7人制の日本代表についてのニュースを日本ラグビー協会のHPに見に行ったときに、どこにあるか分かりませんでした。実際にはしっかり出ていたんですが、私は少しがっかりしてしまいました。スポーツからファンへ円滑な情報の伝達が行われることも19年に向けてのポイントであると思います。

「子どもにはプロの指導者が教えるべき。企業が地域貢献できる仕組み作りは可能」

 以下は質疑応答の一部。

――阪神タイガースや浦和レッズのように成績に関係なく愛されるチームにはどのような特色があるのでしょうか?

 私はアンチ浦和ですが(笑)。浦和はサポーターが自ら動くムードを上手につくったのが、サポーターに熱をもたらしたひとつの要因だと思います。また、サッカーが愛される土壌がありました。日本サッカーといえば広島と浦和だったんですね。静岡はそのあとです。そして浦和は県立校でサッカーが盛んで、卒業生が地元の経済界で活躍しています。これも大きかったと思います。
 浦和も今は大変ですが、ここでどう踏みとどまるか。この対応を見れば、浦和が成功している理由が分かると思います。

――港区にはスポーツする場所がありません。企業がもっとサポートできないのでしょうか?

 港区は教育熱心な方が多くてスポーツをさせようとする方が少ないのも原因だと思います。企業グラウンドについては都内は激減しています。さらに、グラウンドをみなさんに平等に貸し出すのは大変ですから、貸すのを怖がっている部分もあると思います。
 また、企業所属の選手たちが子どもに教えるのは限界があります。やはり自分の仕事や、やるべき練習がありますから。子どもに教えるのは指導のプロがやるべきで、まずは良い指導者を用意することが一番です。
 ただ、企業が地域貢献できる仕組み作りは可能だと思います。選手が社会に役立てる意識を持つのも良いことですね。

――日本はスタジアムと選手の距離が遠いのですが、近くできないのでしょうか?

 日本でも仙台や鳥栖、柏はすごく近いです。ただ、全体的には陸上トラックがあるスタジアムが多いですね。
 FC東京の本拠地の味の素スタジアムは2013年の国体用に使うことが目的としてあります。FC東京として何度も交渉に行きましたが、「FC東京のためのスタジアムではありませんから」と言われました。残念ですが、これが現実です。
 みなさんは世界のスタジアムを考えておられると思いますが、実は一番お客さんが入っているドイツは陸上トラックがあるスタジアムが多いです。ブラジルになると、危険だからという理由でお客さんは遠ざけられています。

 日本でスポーツを観る文化が育たないのは、専用スタジアムが少ないからだけではないと思います。ただし、専用スタジアムの良さ、その必要性が理解されないことは事実で、残念なことです。

<了>

村林裕氏に聞く「あなたにとってラグビーとは」

「昭和52年11月23日の早慶戦。それが全てです。この試合で15年ぶりに早稲田に勝ったのが一番の思い出ですね。左WTBの今岡が、卒業後に40歳という若さで亡くなったんですが、その彼の勇姿も含めて今でも思い出します。私は大学を卒業して社会人2年目でしたが、大事な会議をキャンセルして見に行きました。結局、テレビに映ってしまって大変だったんですが(笑)。あの早慶戦の夜ほど喜んだことはありません。私にとって大切なラグビーの思い出です」

協力:(公財)日本ラグビーフットボール協会
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