大迫勇也が最終予選で味わった“生みの苦しみ”=マレーシアでエースFWが示した存在感
大迫の不発が日本苦戦の一因とも
マレーシア戦、左サイドを強引に突破する大迫。これまでのような迷いは見られなかった 【写真は共同】
ロンドン五輪アジア最終予選の正念場となったマレーシア戦(クアラルンプール)を翌日に控え、大迫勇也はゴールへの意欲をみなぎらせていた。
9月の最終予選初戦のマレーシア戦(鳥栖)で1トップを任されてから4試合すべてに出場しているが、ゴールを奪えないまま、ここまで来てしまった。体を張って攻撃の起点を作ったり、相手マークを引きつけたり、前線からボールを追う守備など、ほかの役割は献身的にこなしてきたものの、FWにとって最大の仕事であるゴールがどうしても取れない。厳しい現状に、本人も不完全燃焼感をぬぐえなかったに違いない。
大迫にチャンスらしいチャンスがなかったのなら仕方ないが、実際にはほぼ毎回のように決定機は訪れていた。11月のシリア戦(東京・国立)で濱田水輝からロングフィードを受け前線でフリーになりながら、味方の上がりを待つ選択をしてフィニッシュに持ち込む機会を逃した場面、あるいは5日のシリア戦(アンマン)で山田直輝のスルーパスに反応して抜け出し、放った右足シュートが枠をかすめたシーンなど、1点を奪える機会は確かに少なくなかった。エースたるべき選手がそれを逃し続けたことが、日本苦戦の一因になったと見ることもできる。
ゴール前に突進する姿に迷いは一切なかった
翻って現在のU−23日本代表を見た時、最終予選4試合の得点は、東慶悟と大津祐樹がそれぞれ2点、山崎亮平、濱田、永井謙佑が1点とかなり分散されている。関塚隆監督に絶大な信頼を寄せられ、1トップに起用され続けている大迫が無得点というのはどうしても気になるところ。さらに今回は清武弘嗣、山崎、山田、大津といったアタッカー陣がそろって不在なだけに、大迫への期待はこれまで以上に高かった。
本人もすさまじい危機感を持ってピッチに立った。それを象徴したのが、開始5分の強引なドリブル突破だ。左サイドに開いて比嘉祐介から縦パスを受け、一気に反転して一目散にゴール前へ突進する姿に、これまでのような迷いは一切、感じられなかった。扇原貴宏のクロスに下がりながら頭を合わせた11分のビッグチャンス、齋藤学の横パスをもらって右足で浮き球シュートを放った31分の決定機など、「どんな形でもいいから1点を取りに行く」という泥臭さが随所に見て取れた。マレーシア戦の起爆剤として使われ、鋭い動きとキレを見せた原口元気と齋藤に刺激を受けた部分もあったのかもしれない。
強い思いが結実したのが、前半終了間際の2点目だった。FKから扇原の鋭いクロスがゴール正面に飛び、そこに走り込んだ大迫がドンピシャのタイミングで執念のヘッド。ついにネットを揺らすことに成功した。「ディフェンスが対応しにくい速いボールをGKとDFの間に蹴ろうと思ったところに大迫君が入ってきてくれた。うまく合わせてくれたと思います」と扇原は大迫に感謝していたが、のどから手が出るほど欲しかった最終予選初得点に、大迫自身も強い安堵(あんど)感を覚えたはずだ。