錦織圭「もっと上を見ている」 積み重ねた自信とベスト8への可能性=全豪テニス
シード選手でも厳しい道のり
苦しい試合に競り勝ちながら成長を証明して見せた錦織 【写真:AP/アフロ】
シード選手の特権として、今大会は初戦、そして2回戦も自分よりランク下位の選手と対戦した錦織。3回戦では第12シードのジル・シモン(フランス)との対決が予想されたが、そのシモンが2回戦で敗れたため、世界ランキング39位のジュリエン・ベネトウ(フランス)と当たる小さな幸運にも恵まれた。
だがこのシモンの敗退は、例え錦織がシード選手といえども、3回戦まで勝ち進むのがいかに困難であるかを逆説的に示す証左である。現に今大会、シードを与えられた全32選手のうち、3回戦まで勝ち残ったのは20人。3人に一人は、ランク的には“格下”の選手に敗れたことになり、この事実は男子テニスの選手層の厚さを物語る。それを誰より良く知る錦織は、開幕前から「シードはそれほど自分に有利だとは思っていない。シード外にも強い選手はごろごろ居ますから」と、厳しい表情で口にしていた。
“データテニス”を攻略した強者のテニス
数年前から選手支援体制を強化したTAは、トップ100選手をあらゆる角度から徹底解析し、それら膨大なデータベースを自国の選手たちに与えているという。「最初は相手に攻められるし、自分から攻めてもカウンターを決められるなど、何をやってもうまくいかなかった」という錦織の試合後の所感も、“丸裸”にされたが故の苦戦を裏付けるものだ。
だが、苦しみながらも長いラリーに持ち込むことで相手を分析し、錦織は徐々に攻略法を見いだしていく。なかでもサービスコースの読みは素晴らしく、リターンでウイナーを量産しはじめた。こうなると、地力の差がスコアに現れだす。
「ケイは追い詰められてからレベルを上げた。それはトップ選手なら誰もがやることで、自分も適応しようと努めたがダメだった」と、対戦相手が素直に認めるほどの、強者のテニスだった。