bjリーグ初の女性ヘッドコーチ、ナタリー・ナカセ=大男たちと渡り合う女性指揮官の素顔とは

柴田愛子

突然のHC就任 チーム再建へのチャレンジ

 1年間ACをつとめたが、東京の活動休止にともない今季は埼玉へと移籍。開幕1ヵ月半で自らがチームを指揮することになるとは思ってもみなかっただろう。「ACの時は、個別に選手とコミュニケーションをとり、個々のスキルアップを手伝ってあげることに重きを置いていました。HCとなるとそれだけではだめ。責任も重圧も増え、今までとは大きく変わりました」と変化の違いを語った。

 突如チームを任されることとなったことに驚きはあったが、戸惑いはなかったという。「ACの経験から選手の特徴や性格は熟知していたし、選手自身も自分を理解してくれていたので、その変化を彼らは柔軟に受け止めてくれました」という言葉通り、それまでに築き上げた信頼関係により、ACからHCへの転身は非常にスムーズだったという。現在埼玉はACをおいておらず、その分選手がHCをサポートしてくれるそうだ。「私は選手からいろんな意見を取り入れることに抵抗はないし、それも大切なことだと思っています」とチームが充実していることを強調した。

 彼女が目指すHC像は、選手一人ひとりのポテンシャルを高めてあげる存在。「感情をぶつけ合うこともあるが、お互いヒートしていても意味がない。うまく相手の手綱を引く飴と鞭が大切」で、選手を常に気に掛けることによって、彼らの細かい変化を見逃さないこと、個々のパーソナリティを大切にすることがHCとしての重要な資質だと考えている。だから彼女はチームをファミリーと呼ぶ。ときには激しく対立し、しかし個々のケアは怠らない。まさに肝っ玉母ちゃんのような厳しさと愛情をもって、チームを率いているのだ。

 現在(1月10日時点)、埼玉はイースタンリーグ10チーム中9位と低迷。逆境の中しっかりと道を切り開いてきた彼女だからこそ、この状況を好転してくれると期待がかかる。先日記念すべきチーム100勝目をあげた埼玉。オリジナル6(※bjリーグ創設時から所属する6チーム)の中で唯一プレーオフ経験が無いだけに、次に目指すのは初のプレーオフ進出だ。彼女が勝利の女神となってチームをプレーオフに導いてくれるのだろうか。今後も埼玉から目が離せない。

「オールスターは楽しみたい。でも勝負にはこだわります」

 今季のbjリーグ・オールスターがいよいよ1月15日(日)に開催される。今年はさいたまスーパーアリーナで開催されることもあり、イースタン・カンファレンスを率いるHCはナタリーだ。現在イースタンは2010、2011年と2連敗中。しかも2試合とも僅差(きんさ)で試合を落としている。「去年、東京のボブ・ヒル氏のもとオールスターを経験することが出来ましたが、勝てる試合を落としてしまったことで、とても悔しい思いをしました。だからこそ今年はリベンジという思いでしっかりと勝ちたいと思っています」。お祭りとして楽しみながらも、やはり勝負にはこだわりたいとナタリー。

 またブースター投票によって選ばれたスタープレーヤーと試合をするのも見どころの一つで、ナタリーは「能力の高い選手が集まるので、豪快なダンクやアリウープなども普段以上に見られると思います。セットオフェンスは見どころじゃないでしょうか。これぞプロのバスケだというところを見せながら、ブースターの心に響くようなオールスターにしたいですね」と試合が待ち遠しい様子だ。豪華なスター選手の競演も楽しみだが、コート上でビックマンをまとめる彼女の勇姿も必見だ。

<了>

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