「一番じゃない」澤が「世界一」に選ばれた理由=FIFA年間最優秀選手受賞を引き寄せたもの
たった3人しかいなかった年間最優秀女子選手
「わたしは、何も一番じゃないんです」
なでしこジャパン(女子日本代表)の合宿では、時折、選手の運動能力テストを行っている。持久力やダッシュ力、ジャンプ力などを測定するのだが、澤はどの種目でもトップになったことがないという。なでしこジャパンの中で、飛び抜けて得意な種目もなければ、飛び抜けて苦手な種目もない。
「だから、澤穂希という選手は、言ってみれば平均点のサッカー選手なんですよ」
この言葉に象徴される謙虚さこそが、澤を世界の頂点にまで引き上げた原動力なのだろう。
2012年1月9日(日本時間10日)、澤穂希がFIFA(国際サッカー連盟)による年間最優秀女子選手に選ばれた。01年に同賞が創設されて以来、過去10年間の受賞者はわずかに3名のみ。01年と02年は、米国の国民的スター、ミア・ハム。03年から05年は、ドイツの“女帝”ビルギット・プリンツが3年連続。そして06年から10年までは“スカートをはいたペレ”と呼ばれるブラジルのマルタが5年連続と、女子W杯や五輪の舞台で名をとどろかせた選手たちが連続受賞していた。
断トツだった澤への支持率
そして、今回の年間最優秀選手賞である。FIFA加盟208の国と地域の女子代表監督およびキャプテン、そして国際ジャーナリストによる1次候補者10選手への投票の内訳を見ると、有効投票総数の28.51%が澤に集まった。以下、2位のマルタが17.28%、3位ワンバック(米国)は13.26%にとどまった。澤への支持率は断トツだったのだ。
振り袖姿でステージに上がった澤は、受賞の喜びを淡々と述べた。そのスピーチの中に、やはり彼女らしいフレーズがあった。
「このような素晴らしい賞をいただけたのは、会長、監督、コーチ、チームメート、家族、友だち、今まで女子サッカーに携わってくれた、すべての方々のおかげだと思っています」
受賞したのは自分だけれど、自分1人で賞にたどり着いたのではない。「一番じゃない」澤は、舞い上がることなく、自分を客観視しているのだ。
澤は事あるごとに「サッカーは1人でやるものではない」と言い、「仲間との団結力」を勝利の糧とする。全員が献身的にプレーするからこそ、総合力で相手を退けられると胸を張る。