尚志、福島に勇気を与える“希望の1点”=大敗にも示し続けたあきらめない姿勢

安藤隆人

見えない敵との戦いは今も続いている

失点を喫しても最後まで貫いた攻めの姿勢は、これからも受け継いでいかなければならない 【たかすつとむ】

 結果は1−6の大敗。しかし、最後まで攻めの姿勢を貫いた中で奪った1点は、仲村監督の言葉通り、大きな意味を持つ。
「国立進出を決めたとき、学校に多くの人からFAXやメールで、『感動をありがとう』という声が届きました。これまで選手権に4度出て、そんなことは一度もなかったのに、本当にそういう声を多くいただいた。それは裏を返せば、僕らが福島に勇気と希望を与えられているということ。ならば国立でもそういうメッセージが送れるような戦いがしたかった。1−6というスコアはもちろん絶対忘れたくないし、悔しい。でも、この1点は本当に福島にとって希望の1点になると思う」

 仲村監督は真っすぐに前を向いた。まだまだ状況が変わらない福島県。放射能という見えない敵との戦いはいまだ終息を迎える気配はない。終わっていないからこそ、これからも希望と勇気を持ち続けないといけない。

 尚志イレブンが示したあきらめない姿勢と未来への希望は、これから先も福島県に脈々と受け継がれなければいけないし、尚志高校サッカー部としても受け継いでいかなければならない。国立での1点はある意味、“決意のゴール”でもある。

<了>

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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