鈴木武蔵、ベールを脱いだ“上州の弾丸”=初出場の桐生第一をけん引する未完の大器
ゆっくりと階段を駆け上がり、新たな局面へ
大社戦でハットトリックの活躍を見せた鈴木(10)。ド派手な全国デビューを果たした 【岩本勝暁】
ベールを脱ぎ去って帰国した鈴木は、ここから快進撃を続ける。彼を欠いたインターハイ(高校総体)県予選はベスト16で早々に姿を消したチームが、選手権予選では決勝まで勝ち上がり、“群馬の雄”である前橋育英を0−2のビハインドから3−2と試合をひっくり返し、全国への切符を初めて手にした。この試合、ゴールこそなかったものの、鈴木のドリブルは誰も止められなかった。
迎えた選手権。初戦となった2回戦の大社(島根)戦で鈴木はハットトリックというド派手な全国デビューを果たすと、3回戦の奈良育英(奈良)戦でも1ゴールをマーク。チームのベスト8進出の立役者になるとともに、得点ランキングでも4ゴールで1位タイにつけている。
「U−17W杯でゴール前での落ち着きを学んだ。世界のFWは必ず結果を残すし、ゴール前の落ち着きがすごい。とても勉強になりました。これまでは周りが見えずに、前を向けるのに向けなかったり、周りを生かした方がいいのに生かさなかったりしていた。今はだいぶゴール前でも落ち着いてプレーできるようになったことが、点を取れている要因だと思う」
ほかの選手よりは遅いかもしれないが、着実に成長している鈴木武蔵。そのポテンシャルは計り知れない、まさに“未完の大器”。逆に言えば、まだ“未完”なだけに、完成しないまま終わることだってあるだろう。まだまだここで将来を約束するのは早いが、彼は今、よりスピードを上げて階段を上ろうとしている。
ベールを抜いた“上州の弾丸”は今、新たなステージを迎えている。
<了>