大熊監督「アジアに連れていく夢を達成できて感無量」=天皇杯決勝後 FC東京監督会見

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「うまい」ではなく「強い」と言われたかった

――サイドチェンジについて。ちょうど2点目、3点目のしばらく前にサイドチェンジが有効になってきたという印象を受けた。最初はごちゃごちゃした感じだったが、なぜあの時間帯でサイドチェンジが有効に使えるようになったのか(後藤健生/フリーランス)

(京都の)鹿島戦を見ても、そのほかの試合を見ても、多少プレッシャーが緩くなるときがあると思うし、サッカーというのはシンプルさが一番難しいと。谷澤も立ち上がり、シンプルさがないことで京都のプレッシャーにはまっていたりした。多少、相手のプレッシャーが落ちていたことと、意識の上でのシンプルさが出てきたこと、それとサイドを変えることによってシュートまで行く場面というのを選手も感じていたと思うので。ディフェンスラインから一発は難しいですけど、今日は羽生がひとつ刻んでサイドを変えたり、羽生の攻撃でのポジショニングというのが、ちょっとフリーでやらせてくれていた部分もあった。彼がたたいて刻んでくれたことで、サイドチェンジの精度が高くなったというところがあったと思います。羽生は90分もたなかったけれど、非常に攻撃のつなぎ役とアクセントになっていたと思います。

 それと、もうちょっと急がないで、詰まったらサイドを変えようというのは(以前から)言っていて、後半は攻め急ぎで間延びしたというのはあると思うので。もうちょっと、両サイドで行けないとき、サイドを変えて時間を作って(攻撃の)厚みを増やすコントロールができれば、もっと決定的なシーンができるかなと思います。

――表彰式で涙を見せていたようだが、どんな心境だったのか。それから大木監督とはどんな言葉を交わしたのか?(江藤高志/フリーランス)

 自分の目標があった。感謝の気持ちと、このメンバーで試合をするのが最後ということがあって、ある意味感無量でした。それと本当に選手が謙虚さを持ったことで、ひたむきさが出てきた。またてんぐにならずに次も頑張ってほしいという期待と感慨がありました。
 大木さんからは「強かった」と言われたのがうれしかった。このチームを持つにあたって「うまい」ではなく「強い」と言われるようにしたかった。大木さんは素直な方なので、やってみて強かったと言われたのはうれしかったし、現状ではまだまだやるべきことはあるんですが、うれしかったです。京都は残念ながら上がれなかったんですけれど、来年ぜひ頑張ってくださいとは言いました。

――「目標があった」というのはタイトルを獲得することか?

 われわれがJ2に落ちたことで、首都にJ1クラブがなくなったこと。それと前に監督をやっていたときに、首都のクラブが世界に出ていくというのは、非常に大事だと思っていました。わたしも代表(スタッフ)とかでアジアを戦っていたんですけど、アジアに行かないと世界に近づかないし、今回の天皇杯も「元日にサッカーをやるのはいい」というルーカスのような経験がないと、距離感というものが縮まらない。有言実行ではないですけど、アジアに出ないと選手の世界への距離感というものは縮まらない。

 わたしの経験もあるので、どうしても選手にはアジアの大会に出場させたい。それだけの実力もあると思っているし、自分で選んだ選手もたくさんいるし、こいつらやれるというのも思っていた。それが結果としてそうなったことと、アジアに行って個人の距離感なり目標なり、FC東京の目標というものが有言実行で、少しだけ世界に近づくというところは、自分の目標でもあったので。これが(指揮を執るのが)最後なんですけど、良かったと思っています。

大木さんとの対戦は運命みたいなもの

――代表での戦友でもある大木監督とこのステージで戦えたことについては?

 J2に落ちた最後の試合が京都であり、共に南アフリカで戦った大木さんと戦うこと、京都も頑張って決勝まで来て、われわれも勝ってきて決勝で当たれるという、不思議な気持ちと、ある意味、運命みたいなものを感じました。最後の試合になったんですけど、大木さんとできたのは光栄だったし、守りに入らずお互いに積極性のあるサッカーができたのも、自分の中ではいい思い出になりました。

――昨シーズン、J2に落ちたときと比べて、守備面でどういう変化があったか?(大住良之/フリーランス)

 守備という言葉はあまり使わなくて、選手に言っているのは「インターセプト=シュート」でもいいし「インターセプト=スルーパス」でもいいし「インターセプト=クサビ」でもいい。「守備」という言葉はどうなのかなと。ほとんどチームでは使わなくて、ボールの奪い方を「攻撃の起点」としていて、それが浸透してきたと。

 かつ、代表でも岡田さんがやってきた「切り替え」というのもあって、マイボールにした後に主導権を握るサッカーを、というのをやってきた。練習をやっていても、いつの間にかボールを奪うことを言わないと、いつもマイボールになってオン・ザ・ボールのポジションばかりをとって、それが守備のバランスや切り替えがなくなることになってしまう。ボールを奪うところから、マイボールにしてどれくらいモビリティー(可動性)とか主導権を握るアイデアを出して、そこから「人とボールが動くサッカー」をやっていかないと「言うは易し」じゃないけど、勝負事になっていくとなかなか勝てない。その辺のことも多少は浸透してきていたと思います。ただ、取ったあとに梶山にミスが多かったり、クオリティーの良くない守備があったり、反省点はあります。

<了>

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