札幌山の手が苦しみながらも2連覇を達成 さらに進化を見せた長岡萌映子=高校選抜バスケ
大会を通じて苦しみながらも王者の意地を見せ、見事に2連覇を成し遂げた札幌山の手 【加藤よしお】
札幌山の手にとって転機となった準決勝
それだけに周囲の期待が高まっていたが、上島正光コーチは「今年は長岡一人のチーム。優勝できるだけの力はない」と冷静に分析していた。司令塔となるガードが弱く、ディフェンスにも弱点を抱えていた。事実、今大会序盤の試合でも失点が多く、苦しい戦いを強いられていた。
そんな札幌山の手が、準決勝で豹変(ひょうへん)した。メインコートでの準決勝、桜花学園戦で攻守においてこれまでにない粘り強さを見せたのだ。大会屈指の好ガード#4三好南穂と180センチ台のツインタワー馬瓜エブリン、河村美幸を擁する桜花学園を74−71で退けた。エース長岡の活躍に加えて3点シュートが9本と炸裂し、勝負所の守りもチームディフェンスが機能した。シューター佐藤れなは「メインコートに立ったら、チームがガラリと変わった。自然と気持ちが一つになっていた」と話す。これまでのモヤモヤぶりが一気に吹っ切れた一戦だった。
コーチも“まさか”と語る大会2連覇
勝負所のリバウンドを制し、ディフェンスでは寄りの速い守りで相手のリズムを崩していく。最終スコアは80−73。リバウンド41本は山形商の26本を圧倒。最後の大舞台で、チームは一丸となって最高の試合を見せた。昨年の王者の意地が、そこに垣間見えていた。
優勝インタビューで「人生には“まさか”というのがあるんだなと実感した」と語った上島コーチ。「選手が頑張った。今日は褒めてやりたい」と、指揮官の口からはめったに出ない最上級の賛辞も飛び出した。
代表の経験を経てさらに進化した長岡萌映子
大会の総得点204点と札幌山の手のエース長岡はその実力を遺憾なく発揮した。今後の活躍にも目が離せない 【加藤よしお】
「あの頃が一番きつかった。代表では(年齢が)一番下なので、何も失うものがないから思い切りできるけれど、チームに戻ると自分が先頭になってやらないといけない。その気持ちの切り替え、モチベーションを保つのが一番難しかった」と当時を振り返る。
そんな試練を経たからこそ、長岡は一段と進化を遂げた。2人、3人がかりで守られても、冷静だった。今大会の総得点204点は断トツの1位。1試合平均は40.80得点。東京成徳大高戦では最多得点タイ記録の51得点(1989年大会、加藤貴子=富岡)をマーク。総リバウンドも74本を記録した。
「シュートへの判断力が的確。状況の見極めが落ち着いていた」。この日、テレビゲストとして観戦していた日本代表キャプテンの大神雄子(JX)も、長岡の成長とたくましさに感嘆の言葉を贈った。
キャプテンとしての重責を果たした長岡は、「最後まであきらめないで仲間を信じてやった結果。自分たちの代で優勝できて本当にうれしい」と最高の笑顔を見せた。昨年以上に価値ある、重みのある優勝だった。