優勝を争う浅田・鈴木・村上の三つ巴と、世界ジュニア出場をめぐる大混戦=フィギュア全日本選手権・女子シングル

野口美恵

世界ジュニアは佐藤未生、宮原知子、庄司理紗の3人に

総合5位に入り、世界ジュニア初出場を決めた佐藤 【坂本清】

 熾烈な争いとなった世界ジュニア選手権の候補者は、全日本ジュニア選手権から推薦出場となった、宮原知子、友滝佳子、庄司理紗、鈴木春奈、大庭雅、佐藤未生の6人と、西野友毬の7人。うちジュニアGPファイナルに出場したのは庄司のみだ。

 この大舞台で見事に才能を開花させ、世界ジュニア初出場をつかんだのは、山田満知子コーチの門下生、佐藤。ジャンプの高さや飛距離はシニアの選手を凌ぐほど。フリーは伊藤みどりがアルベールビル五輪で踊ったのと同じラフマニノフの「ピアノ協奏曲」で、伊藤をほうふつさせる思いきりの良いジャンプを決めた。「ダブルアクセル+トリプルトゥループ」も成功すると、村上佳菜子や今井遥をしのぐフリー4位で、総合5位となった。「ジャンプは流れの中で跳んで、大きな演技ができたと思います」と笑顔。新人賞も獲得する活躍だった。

 またジュニア女王の宮原も意地を見せた。ショートはジャンプミスで15位発進となったが、フリーは一転、「トリプルルッツ+トリプルトゥループ」と「ダブルアクセル+トリプルトゥループ」に挑戦するなどジャンプ力を発揮。ジュニアとは思えない不思議な空気感をかもし出せる演技派でもあり、未知数の可能性を感じさせる。「フリーはうれしい気持ち、悲しさ、うれしさと変化する曲。気持ちを込めて踊りました。緊張は考えないようにしました。世界ジュニアではもっと良い演技をしたいです」と目を輝かせた。

 ジュニアの前年度女王、庄司もショート11位からばん回し、フリーは大きなミスのない演技を披露。「トリプルサルコウ+トリプルトゥループ+ダブルトゥループ」や「ダブルアクセル+トリプルトゥループ」などの大技を盛り込み、昨季よりも滑らかになったスケーティングも冴えわたる。総合7位で世界ジュニアの切符を勝ち取った。

 惜しくも世界ジュニア出場はならなかったが、西野友毬はショートで「トリプルルッツ+ダブルトゥループ」などを決め、ノーミスの演技で4位。フリーは小さなミスが重なり11位、総合8位に。スケーティングの雄大さや伸びやかさは一段とアップし、シニアでも十分に通用する演技内容を見せた。

 また佐藤信夫コーチの門下生として注目を集める鈴木も、無駄のないきれいなスケーティングで観客を魅了。スピンの回転の速さやポジションは、現日本女子のなかでもトップといえる秀逸なもので、総合力が光り9位と健闘した。

ジュニア勢が大躍進、次期エースへの顔ぶれ出そろう

 終わってみれば、優勝争いの3人と、今季からアメリカの佐藤有香コーチのもとに移った今井遥の上位シニア4人の後は、5〜9位、11位、13位がジュニア選手が占めるという、ジュニア大躍進の展開となった。2014年ソチ五輪(ロシア)、2018年平昌五輪(韓国)への争いは確実に始まっている。そのプレッシャーのなか全24選手がミスをし、課題と反省を胸に、大会は幕を閉じた。2年後、この緊張感のなかで実力を発揮したものが五輪切符を手にする。今回は、その顔ぶれが出そろい、伸びしろの大きさを感じさせる大会となった。

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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