優勝を争う浅田・鈴木・村上の三つ巴と、世界ジュニア出場をめぐる大混戦=フィギュア全日本選手権・女子シングル

野口美恵

悔しさをにじませた鈴木

鈴木は痛恨のジャンプミスに悔しさを見せた 【坂本清】

 村上と鈴木は、難しい大会をよく戦った。試合直前に4日間も休んだ浅田の調子を考えれば、今回こそ優勝のチャンスだ。しかも国民が浅田の優勝を期待する特殊な状況下。プレッシャーは、やはり大きかった。

「うまくいかないなぁ……っていう気持ちです。練習ではできているのでこのジャンプ構成できているのに」。ショート3位から巻き返しを図った鈴木は、フリーの後半、トリプルルッツが1回転に。優勝を狙うなら痛恨のミスだった。

 ショートでは「トリプルトゥループ+トリプルトゥループ」が「3+1」になり、3位発進。「できるんだから見せたい、という気持ちが強すぎました」と、気持ちが空回りしてしまったという。「気持ちがふっきれた」というフリーは、スピードもキレもある鈴木らしい演技を披露したが、後半でのジャンプミス。「今シーズンはプログラムを評価されて(演技構成点が高い)手応えもあるのに、技術点が乗らない。ちゃんと両方そろえないと」と悔しさをにじませる。

 自身の後に滑った浅田の演技を見ると「いろいろあった中でいつも通り試合でできるというのは素晴らしい強さです」と言い目を潤ませた。「優勝を目指していたけれど、私はこの出来なら仕方ないです。練習ではできているので、シーズン後半もこのジャンプ構成でやり通したい」。完成すれば世界の表彰台を狙えるジャンプ構成を武器に、世界選手権へと挑む。

ショート1位の村上、フリーでは本領発揮できず

村上はショート1位発進も、最終滑走となったフリーではステップで転倒するなど動きが固かった 【坂本清】

 一方の村上は今季、靴のトラブルで不調だったものの、11月のフランス杯後、足に合う靴が見つかったという。ショートでは「トリプルトゥループ+トリプルトゥループ」を決めると、本来のパワーとスピードのある演技で堂々の首位発進となった。「たくさん練習してこれたので自信もありました」と言い、ノープレッシャーの様子で笑顔を見せた。

 しかしフリーは違った。「1位だったのはマグレなんで」と繰り返し、重圧をはねのけようとしたが、最終滑走の順番を待っている間に緊張は高まっていった。「縄跳びしたり走ったりして、体がなまらない様にしていた」が、動きが固かった。課題のループは、1回転と、3回転の回転不足に。ステップで転ぶなど、本領発揮とはいかなかった。演技を終えた瞬間は泣き出しそうな表情。「練習でやってきたことを出せないのはつらかったけれど、良い経験になりました。もっとたくさん練習して、1日にノーミスを2、3回できるようにします」と誓った。

2/3ページ

著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント