日本男子、4回転時代の幕開け 本番で見せたスターの資質=フィギュア全日本選手権・男子シングル

野口美恵

混戦、世界ジュニアの切符は田中、宇野、日野が獲得

世界ジュニアの代表に選ばれた田中刑事 【坂本清】

 世界ジュニア選手権(2月27日〜3月4日・ベラルーシ)の代表は、全本ジュニア選手権、ジュニアGPファイナル、全日本選手権の3つの総合結果で判断される。結果的に選出されたのは、全日本という大舞台で力を発揮した上位3人の、田中刑事、宇野昌麿、日野龍樹だった。

 全日本ジュニア王者の日野は、トリプルアクセルをショートで1本、フリーで2本降り、昨シーズンより確実に上がったジャンプ力を示した。フリーは大きなミスなく最後まで集中力を保つと、終わった瞬間は感無量といった様子を見せ、総合10位につけた。
 昨季の世界ジュニア銀メダリストの田中も、トリプルアクセルを計3本そろえる貫禄の演技で総合7位。「男子がみな4回転を跳んでいるので焦っているけれど、まずはトリプルアクセルを確実に跳んでいくこと。フリーは最終グループの緊張に負けなかった」と手応えをつかんだ様子だった。
 総合9位に入った宇野はまだトリプルアクセルはないが、身体が小さいわりにスピードのあるスケーティングや、音感のある演技に大きな伸びしろを感じさせる逸材。「全日本の選手はやっぱりみんなうまい。トリプルアクセルを早く跳べるようになりたい」と強い決意をみせた。

ジャンプを本番で決める“スター性”

 世界と戦うには、やはり男子はジャンプが必須条件だ。そのためには、安定した基礎スケーティングや体力を練習で身につけ、さらには本番への集中力や勝負勘も必要になる。

 試合だけを見てしまうと、ジャンプで失敗した選手はもともと跳べないように感じられてしまうが、誰もが普段の練習ではノーミスの演技をしているからこそ、本番でもそのジャンプ構成に挑んでいる。練習でできたことが本番で出せるか――。その“本番力”を全日本選手権という大舞台で発揮してこそ、魅力あるスケーターとして認められる。

 2009年も2010年も全日本選手権での4回転成功者はゼロだった。しかし、「4+3」を決めた高橋、初めて4回転のコントロール術をつかんだ小塚、ショートでの4回転の失敗というプレッシャーを乗り越えた羽生、無良、村上――。4回転ジャンパーが5人も現れた2011年は、日本男子のスター性のきらめきに心を奪われる大会となった。

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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