新時代を迎えた高校サッカーに求められること=年間リーグの妙、選手権は群雄割拠の時代に
リーグ戦とカップ戦を並行して戦うことに
プレミアリーグに参入した流通経済大柏は高校総体でもベスト4に進出したが、選手権出場はならなかった 【スポーツナビ】
今年度から新たに創設された大会は高円宮杯U−18プレミアリーグ。従来9、10月に行われていた高円宮杯全日本ユース(U−18)選手権を発展的に解消する形で、全国をイースト(東)とウエスト(西)に二分割してのリーグ戦として創設された。いわばプリンスリーグの「上部リーグ」である。
このプレミアリーグは確かに大きな試みで、自然とサッカーファンの注目も集めたのだが、「第二次改革」の本質はこの大会そのものにはない。今年度に生じた高校年代最大の変化は、プレミアリーグという大会ではなく、年間を通じたリーグ戦が導入されたということにある。これまでのプリンスリーグは、地域によって若干の差異はあるものの、おおむね4月に開幕し、7月に閉幕していた。2ステージ制を採用していた中国地域のようなユニークな例もあるが、総じて1回戦総当たり方式が主流。これが今年になって変わった。プレミアリーグはもちろん、その下のプリンスリーグも4月に開幕して12月(地域によっては9月)まで続く2回戦総当たり方式が主流になったのだ。都府県リーグについては対応が分かれているが、いずれは年間リーグになっていく見込みだ。U−15以下の年代についても、“リーグ化”に向けた大きな改革が進行している。
この違いは小さいようで大きい。これまでは夏休みの大会(全国高校総体と日本クラブユース選手権)に向けた準備期間に行われていたリーグ戦が、夏の全国大会をまたぎ、冬の全国大会(高校選手権とJユースカップ)の予選もまたぐ形で開催されるようになったわけだ。リーグ戦に加えて従来のカップ戦を加えると、多くのチームが「毎週、試合がある」という状態になった。これまで日本の高校年代では、基本的にリーグ戦とカップ戦は分断された存在だった。「リーグ戦の時期」は夏までで、そのあとは「カップ戦の時期」に移行するという考え方で、チームは作られてきていた。それがリーグ戦とカップ戦を並行して戦うという発想を求められるようになったわけだ。一つの大転換である。
番狂わせの温床となったリーグ戦
理由はもちろん一様ではないのだが、それでもプレミアリーグでの戦いが佳境に入った段階で、高校選手権予選が「間に入ってくる」日程が与えた影響があったのは確かだろう。相手との力関係が大きく違ってくる中で、戦い方を変える必要のあるリーグ戦とカップ戦。初めての試みということもあってか、その切り替えがうまくいかないチームが多かった。プレミアリーグではカウンターサッカーをやっていたチームであっても、それぞれの県レベルでは圧倒的にボールを支配するサッカーを自然とやることになるわけだが、その適応は簡単ではないのだ。
また、年間を通じたリーグ戦の日程を確保する都合から、プレミアリーグやプリンスリーグ出場校は、「いきなりベスト8、ベスト4」といった「スーパーシード校」として変則的なトーナメントで選手権予選に参加するケースが多く、これも番狂わせの温床となった。勝ち残って勢いに乗っている相手と、それまでのリーグ戦とは違う戦い方を迫られながら“初戦の緊張感”をもって戦う。その難しさは想像に難くない。ベスト8からの登場で足をすくわれた総体王者・桐蔭学園は、一つの典型例だったと言える。青森山田ですら、今年の予選は大苦戦だった。
つまり、ほとんどの高校チームにとって最大目標である高校選手権予選を戦う上で、年間リーグはポジティブな要素としてなかなか機能しなかったということになる。もちろん、より正確に言えば、「機能させられなかった」ということだろう。今年が年間リーグの初年度だったのだから、各指導者ともに選手たちがどうなるのかという経験値がなかったのだから無理もない。第二次改革を経て始まった「年間リーグの時代」にあって、どうチームを作り、選手にアプローチするのか。「高校選手権で勝つ」という単純な視点で見ても、従来と異なるやり方が求められているのは確かだ。極端な話、プロの世界でも行われているように、「リーグ戦はテストや育成の場と割り切り、カップ戦に注力する(あるいはその逆)」という考え方も出てくるだろう。