ネイマール、愛するサントスに捧げる優勝を夢見て=決勝では大胆かつ楽しいサッカーを

大野美夏

大事な場面でプレッシャーに負けない

ネイマールはバルセロナとの決勝でプレッシャーに負けず、通算100ゴール目を決められるか 【Getty Images】

 14日に行われたクラブワールドカップ(W杯)準決勝の柏レイソル戦で、ネイマールはプロサッカー人生での通算99ゴール目をマークした。内訳は、サントスで81、A代表8、下の世代のカテゴリーの代表で10だ。ネイマールはストライカーではないが、得点力の高さは誰もが認めるところ。しかし、彼のすごいところはゴールを決められることだけではない。大事な試合でゴールを決められる責任感だ。

 プロ2年目の2010年、サンパウロ州選手権(日本で考えられる県レベルの大会ではなく、6部リーグを誇るビッグリーグ)の決勝戦で2点を決め、コッパ・ド・ブラジルの決勝でも先制点を決めてサントスに勝利をもたらした。

 2011年に入ってすぐ、ネイマールはU−20南米選手権に出場した。本来、すでにA代表で活躍するネイマールにとって、それほど大きな価値がある大会とは思えなかったが、彼は決勝トーナメントで貴重な2点をたたき出し、「A代表、アンダー(下のカテゴリー)関係なく、どんな大会にも出たい。どんな試合でも学ぶことがある。ネイ・フランコ監督の指導のもと、いい経験ができた」と語った。

 この大会でロンドン五輪出場権を獲得して帰国した後、すぐにコリンチャンスとの州選手権決勝に臨み、見事2点目を決め2連覇を成し遂げた。そして、今シーズン最大の大会、コパ・リベルタドーレスでは、ファイナルのペニャロール戦で、試合の流れを決定づける先制点をマーク。大事な場面でプレッシャーに負けることなく、ゴールを決められるのがネイマールだ。

 柏戦でも初戦のピリピリムードを緩和させる貴重な先制点を決めた。18日の決勝、バルセロナ戦でも同じように、のしかかる大きなプレシャーなどものともせず、楽しんでゴールを決めてもらいたいものだ。

「どんな相手でも、どんな試合でも、大胆かつ楽しくをモットーにプレーするだけ」とネイマールは構えることなく言う。それでも、ファンにとって何よりも気になるのは、ネイマール対メッシの個人戦。しかし、ネイマール本人は「対決はネイマール対メッシじゃなく、サントス対バルセロナだ。個人戦なんてありえない。両クラブの存在から見れば、個人なんてほんの小さなもの。この一戦はきっと歴史に残る試合になるだろう。もちろんバルセロナという素晴らしいクラブ相手ということは分かっているけど、僕はとても落ち着いているよ。だって、どんなクラブ、どんな代表が相手でも、どんな場所でもあまり関係ないんだ。僕にとって一番大事なことはサッカーをすることだけ。明日は、『もう一試合やってやるか!』という感じに過ぎない」

「サントスが優勝するためなら何でもする」

 19歳の無邪気さを見せながらも、自分のことよりもまずはチームという成熟した一面を持っている。
「世界ナンバーワンのチームと戦う。それは夢だ。それもクラブW杯という頂点で。絶対にタイトルを取りたい。ゴールを決めるのは僕じゃなくていい。誰でもいいんだ。サントスが優勝するためなら何でもする」

 14歳の時から、欧州からのオファーを受けるたびにブラジルを出るか残るかを自問し続けてきた。そのたびに、サントスを選んだ。現在は、ブラジルの経済成長の波にも乗って年棒18億円をもらうようになっているが、もっと低い年齢の時には、そこまでもらえるという保証などどこにもなかった。現に、下部組織で優秀な選手は早々に欧州に出ていく者だっている。それでも、彼は残った。

 そして今、経済的基盤は整ったとはいえ、世界での注目度という意味でブラジルは欧州中心のメディアから隔離された存在である。もし、バルセロナやレアル・マドリーでプレーしていたら、世界一への道はもっと簡単なのかもしれない。FIFA(国際サッカー連盟)バロンドール(世界年間最優秀選手賞)も、最終リストの3人に残ったのかもしれない。

 でも、彼はブラジル、サントスを選んだのだ。13歳からサントスのメンバーである彼にとって、サントスは愛すべき心のクラブ。そして、愛すべき人々がいるふるさと。“サントスで世界一”になることが彼の夢なのだ。ネイマール対メッシなど、米粒のような一要素に過ぎないのだろう。Boa Sorte! Neymar!(Good luck!)

<了>
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著者プロフィール

ブラジル・サンパウロ在住。サッカー専門誌やスポーツ総合誌などで執筆、翻訳に携わり、スポーツ新聞の通信員も務める。ブラジルのサッカー情報を日本に届けるべく、精力的に取材活動を行っている。特に最近は選手育成に注目している。忘れられない思い出は、2002年W杯でのブラジル優勝の瞬間と1999年リベルタドーレス杯決勝戦、ゴール横でパルメイラスの優勝の瞬間に立ち会ったこと。著書に「彼らのルーツ、 ブラジル・アルゼンチンのサッカー選手の少年時代」(実業之日本社/藤坂ガルシア千鶴氏との共著)がある。

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