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バルサのサッカーが示す能動的な人生哲学
小澤一郎のバルセロナ密着記

内容と結果は戦前の予想通り

バルセロナのサッカーはエンターテイメント性を備え、「見ている者を楽しませる」という特徴がある
バルセロナのサッカーはエンターテイメント性を備え、「見ている者を楽しませる」という特徴がある【Getty Images】

 現在進行形で歴史を作り、ヨハン・クライフが監督を務めていた時代の“ドリーム・チーム”以上の常勝軍団として無類の強さと上質なフットボールを展開しているグアルディオラ監督率いる“ペップ(グアルディオラ監督の愛称)チーム”。そのバルセロナの本気モードの公式戦を日本で観ることができるとあって、15日に行われたFIFA(国際サッカー連盟)クラブワールドカップ準決勝のアルサッド戦には、6万6298人もの大観衆が横浜国際総合競技場に集まった。


 ペップチームの特徴の1つが、「どんな相手であれバルサらしいサッカーで勝利するとともに、見ている者を楽しませる」ことだと思う。要するに、「ハズレ」の試合がほとんどなく、スタジアム観戦した者を「つまらなかった」という気持ちで帰宅させないエンターテイメント性を備えている。「サッカーとはスペクタクルである」というカタルーニャ人の気質をクラブの哲学やチームのサッカーに落とし込み、今はそれを自前で育てた選手たちで実現している絶頂期だ。


 試合の流れや得点経過については今更ここで詳しく述べる必要もないだろう。72%というボール支配率、シュート数19本という数字からもバルサの圧倒ぶりは分かるし、何より4−0という試合結果がアルサッドとの実力差を如実に物語っている。内容と結果はある意味戦前の予想通りで、敵将(アルサッドのフォサッティ監督)ですら「バルセロナと対戦したらこのぐらいの結果は仕方ないのかもしれない」というコメントを残している。

バルサのすごさは「つかみどころのなさ」

 今のバルサのすごみについては、戦術や技術の側面からさまざまなことが語られている。この日もキックオフ時のスタートポジションは、アドリアーノを右サイドバックとする1−4−3−3だったが、アルサッドが5バックでベタ引きの守備的戦いをしてくると分かるといつの間にかアドリアーノは右ウイングのポジションを取り、右サイドの高い位置に張り付いていた。アドリアーノが上がることで3バックになるかと思いきや、スライドして右寄りのプジョルがサイドバックの位置で対応すると、ピボーテ(アンカー)のセイドゥ・ケイタがセンターバックの位置に下がって4バックに変形する。


 結局、アルサッド戦のバルセロナのシステムや各選手のポジショニングは明確には定義できないし、常に流動的に試合状況やスコアによって微調整されている。よって、バルサのすごさというのはある意味「つかみどころのなさ」であり、それは戦術やシステムがどうこうという話ではないので理解するためにはスタジアム観戦をして生き物としてのチームとサッカーを感じてもらうことが一番いい。


 例えばこの試合をスタジアムで観戦していた人は、バルサがボールを失った瞬間はチーム全体がボールにすっと集まる“縮”の動き、ボールを奪った瞬間はボールからすっと離れる“伸”の動きがあることを無意識ではあっても感じたはずだ。今のバルサはボールを中心とした伸縮性を持つチームであり、スタジアムから俯瞰(ふかん)的にとらえた時にチームとしての統一感とそこから派生する“機能美”がある。漠然とした表現で恐縮なのだが、書き手としてこの部分を表現することが一番難しく、これに挑むこともわれわれジャーナリストの責務だとは思うが、逆に今回のバルサが来日してくれたことで「見てください」、「感じてください」というアプローチもできるのではないかと考えた。

小澤一郎
小澤一郎

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会 人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育 成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。 多数の専門媒体に寄稿する傍ら、欧州サッカーの試合解説もこなす。著書に『サッカ ーで日本一、勉強で東大現役合格 國學院久我山サッカー部の挑戦』(洋泉社)、『サ ッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『サッカー選手の正しい売り方』(カ ンゼン)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)、訳書に『ネイマール 若 き英雄』(実業之日本社)、『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロ ナのマーケティング実践講座』(ソル・メディア)、構成書に『サッカー 新しい守備 の教科書』(カンゼン)など。株式会社アレナトーレ所属。

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