クラブW杯に懸けるバルセロナの本気度=スペイン人記者が語る大会の位置付け

小澤一郎

大会に出場すること自体が大きな価値を持つ

マルティネス記者は「大会に出場すること自体が大きな価値を持つ」とその重要性を語った 【小澤一郎】

「ペップ同様に日本食が好きだから、今回の来日も楽しみにしていた」と語るラジオ局オンダ・セロのアルフレド・マルティネス記者は、クベイロ記者同様の立場で、「クラブW杯という大会は、CLに優勝し、欧州王者とならないと出場できません。ということは、誰がどういう表現をしようが誰にでもあるチャンスではないわけで、この大会に出場すること自体が大きな価値を持つのです」と語る。

「クラシコ後だけにモチベーションの低下もあるのでは?」という、こちらの問いに対してもマルティネス記者は、「いやいや、全くその心配はありません。グアルディオラという監督はチームのメンタルコントロールに長けていて、彼が就任して以降、あらゆるタイトルを勝ち取った後でも勝ち続けているのが心の操縦術の巧みさを示しています」とその理由を述べる。

 戦術、選手起用のテーマについては、「おそらく、対戦相手や試合状況によって流動的にシステムや戦い方を変えてくるだろうし、個人的には3バックの1−3−4−3システムが多く使われるのではないかと見ています。クラシコで控えに回ったビジャについては、バルサにおいて『外せない選手』はいない。確かにメッシ、シャビは今のチーム状況からしてそうした選手に見えるが、わたしはそうではないと思うし、ペップは常に誰が入ってもチームとして機能するサッカーや戦術を準備しています」と説明する。

バルセロナの強さの秘けつ

 最後に話を聞いたのが『アス』紙のサンティ・ヒメネス記者。彼には時差とコンディション面の不安について聞いた。「時差の影響があるのは間違いないですし、特に初戦(準決勝)のアルサッド戦では動きが重い選手も出るでしょう。とはいえ、グアルディオラはメディカルチーム、フィジカルコーチらと入念に準備を進めてきていますし、クラシコであの快勝ができたことで心理的疲労については、当初の予想よりはるかにいい状態であるはずです。クラシコのようなビッグゲームの後に控える試合というのは、一般的にパフォーマンスレベルが落ちてしまうものなのですが、今回はその心配もいらないでしょう。グアルディオラらしく思い切ったオフを与えていますし、対戦相手は決まっていないとはいえ、おそらくサントスとの決勝ではいいサッカーを見せてくれるでしょう」

 中には優先順位からしてこのクラブW杯はバルセロナにとって「3番手」の大会であると語る記者もいたが、オリベロス記者自身も「本気でタイトルを獲りに来ていますよ」とは話している。同記者は「目の前の試合、大会に集中する集中力の高さがペップ・チームの特長であり、勝ち続けている理由の1つです」と語る。よって、優先順位があるとはいえ、「この大会を軽視しているわけでは全くないです」という説明を付け加えた。

 最後にオリベロス記者は今のバルセロナの強さの秘密をこのように説明してくれた。

「日本人の皆さんと同じですよ。とにかく、一生懸命働くこと。その前提があって、ペップは十分な休息や睡眠、食事にこだわっています。いい選手を集めて、いいトレーニングをした上で、細部にまでこだわっていますから、ある意味勝つのは当然です。それが一番難しいのですが、秘けつというのはそういう日常的でシンプルなことにあるのではないでしょうか」

<了>

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著者プロフィール

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会 人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育 成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。 多数の専門媒体に寄稿する傍ら、欧州サッカーの試合解説もこなす。著書に『サッカ ーで日本一、勉強で東大現役合格 國學院久我山サッカー部の挑戦』(洋泉社)、『サ ッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『サッカー選手の正しい売り方』(カ ンゼン)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)、訳書に『ネイマール 若 き英雄』(実業之日本社)、『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロ ナのマーケティング実践講座』(ソル・メディア)、構成書に『サッカー 新しい守備 の教科書』(カンゼン)など。株式会社アレナトーレ所属。

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