IDでもっと便利に新規取得

ログイン

来日後に見えた懐の深いペップ流の調整術
小澤一郎のバルセロナ密着記

リラックスした表情で軽めの調整

グアルディオラ監督(中央)は選手に“勝つため”の自由時間を与えたようだ
グアルディオラ監督(中央)は選手に“勝つため”の自由時間を与えたようだ【写真は共同】

 FIFAクラブワールドカップ(W杯)のため来日した欧州王者のバルセロナが「世界一」のタイトルに向けていよいよ日本での活動を開始した。11日の22時半ごろに成田国際空港に到着したバルセロナをいきなり待ち受けたバルサファンの数は、バルサ公式ホームページによると「200人」近く。空港到着後、バスで横浜市内のホテルに到着した際にも50人近いファンが集まり、来日を熱烈に歓迎したという。


 12日のバルセロナは午前にフォトセッションなどをこなし、12時半から来日後初となるトレーニングを横浜市内のグラウンドで行った。冒頭15分のみ報道陣へ公開となったが、メッシやイニエスタなどの主力選手を含めて大会の登録メンバー23名は皆、リラックスした表情で軽めの調整を行っていた。


 レアル・マドリーとの“クラシコ”(伝統の一戦)直後の来日であるため、気になるのがコンディション面。特にスペインでは、時差ぼけを心配する声が上がっている。12日の記者会見に出席したダニエウ・アウベスは「南米への遠征も多いから僕個人としては問題ない」と発言していたが、逆に不慣れな欧州出身の選手たちは早朝に目が覚めたとTwitter上で明かしたピケのように、少なからず影響があるとみられる。


 ただし、時差ぼけ対策としてグアルディオラ監督はマドリーから成田までの夜間13時間近いフライトにおいて「4時間以上寝ないように」と選手に通達。また、12日の午後は選手に自由時間が与えられた。グアルディオラ監督は選手に「午後は自由時間だから好きなことをしてきなさい。あまり時間はないけれど、明日(13日)の昼食までにホテルに戻ってくれば好きなことをしてきていい」と言って選手を送り出したことを会見で明かしている。

“勝つため”には最大限休む

 ホームゲームであっても前泊制度を採用して選手を管理する監督が多い中、「選手を信頼し、自由を与えること」が“ペップ流”。会見でも「世界一になりたいという願望があるのだから無理にコンセントレーションを強いることはない」と説明している。実際、スペインにおいてもホームの試合当日の日中に家族と買い物をできるような自由時間を設けたり、アウエーゲームにおいても国内リーグである限り基本は当日移動が多い。


 すべてのタイトルを狙い、実際にすべての大会で上まで勝ち残るからこそ、バルセロナは並のチームよりも年間の試合数、移動、遠征が多くなる。であれば、選手たちの精神的、肉体的負担を緩和すべくたとえ半日であっても、日本に来てもオフを作ろうというのがペップ流の調整術なのだ。


 会見が終わり会場を後にする際、メッシの父親であるホルヘ・メッシ氏がカメラ片手にショッピングモールを散策していたが、選手のみならずグアルディオラ監督自身も妻と子供を日本に連れてきている。会見の最後で「東京で何をしたいですか?」と聞かれたグアルディオラ監督は、「寿司、刺身、日本食を食べたいね。バルセロナでも数多くの日本食レストランがあるけれど、ここ(日本)で日本食を試したい」とリラックスした表情で返していた。


 「世界一を獲るため」とガチガチのコントロール、スケジュールで選手を追い込むのではなく、「東京でも京都でも集合時間に帰ってくればどこに行ってもいいぞ」と言える懐の深さがペップ流の特徴であり、オンとオフをきっちり使い分けるのがバルセロナの強さの秘けつ。だからこそ、われわれも初日から横浜や東京の繁華街に散っていった選手たちを「観光目的で来た」と受け取るのではなく、“勝つため”には最大限休む、オフを楽しむことが必要だと学ぶべきだろう。


<了>

小澤一郎
小澤一郎

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会 人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育 成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。 多数の専門媒体に寄稿する傍ら、欧州サッカーの試合解説もこなす。著書に『サッカ ーで日本一、勉強で東大現役合格 國學院久我山サッカー部の挑戦』(洋泉社)、『サ ッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『サッカー選手の正しい売り方』(カ ンゼン)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)、訳書に『ネイマール 若 き英雄』(実業之日本社)、『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロ ナのマーケティング実践講座』(ソル・メディア)、構成書に『サッカー 新しい守備 の教科書』(カンゼン)など。株式会社アレナトーレ所属。

スポナビDo

新着記事一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント