来日後に見えた懐の深いペップ流の調整術=小澤一郎のバルセロナ密着記
リラックスした表情で軽めの調整
グアルディオラ監督(中央)は選手に“勝つため”の自由時間を与えたようだ 【写真は共同】
12日のバルセロナは午前にフォトセッションなどをこなし、12時半から来日後初となるトレーニングを横浜市内のグラウンドで行った。冒頭15分のみ報道陣へ公開となったが、メッシやイニエスタなどの主力選手を含めて大会の登録メンバー23名は皆、リラックスした表情で軽めの調整を行っていた。
レアル・マドリーとの“クラシコ”(伝統の一戦)直後の来日であるため、気になるのがコンディション面。特にスペインでは、時差ぼけを心配する声が上がっている。12日の記者会見に出席したダニエウ・アウベスは「南米への遠征も多いから僕個人としては問題ない」と発言していたが、逆に不慣れな欧州出身の選手たちは早朝に目が覚めたとTwitter上で明かしたピケのように、少なからず影響があるとみられる。
ただし、時差ぼけ対策としてグアルディオラ監督はマドリーから成田までの夜間13時間近いフライトにおいて「4時間以上寝ないように」と選手に通達。また、12日の午後は選手に自由時間が与えられた。グアルディオラ監督は選手に「午後は自由時間だから好きなことをしてきなさい。あまり時間はないけれど、明日(13日)の昼食までにホテルに戻ってくれば好きなことをしてきていい」と言って選手を送り出したことを会見で明かしている。
“勝つため”には最大限休む
すべてのタイトルを狙い、実際にすべての大会で上まで勝ち残るからこそ、バルセロナは並のチームよりも年間の試合数、移動、遠征が多くなる。であれば、選手たちの精神的、肉体的負担を緩和すべくたとえ半日であっても、日本に来てもオフを作ろうというのがペップ流の調整術なのだ。
会見が終わり会場を後にする際、メッシの父親であるホルヘ・メッシ氏がカメラ片手にショッピングモールを散策していたが、選手のみならずグアルディオラ監督自身も妻と子供を日本に連れてきている。会見の最後で「東京で何をしたいですか?」と聞かれたグアルディオラ監督は、「寿司、刺身、日本食を食べたいね。バルセロナでも数多くの日本食レストランがあるけれど、ここ(日本)で日本食を試したい」とリラックスした表情で返していた。
「世界一を獲るため」とガチガチのコントロール、スケジュールで選手を追い込むのではなく、「東京でも京都でも集合時間に帰ってくればどこに行ってもいいぞ」と言える懐の深さがペップ流の特徴であり、オンとオフをきっちり使い分けるのがバルセロナの強さの秘けつ。だからこそ、われわれも初日から横浜や東京の繁華街に散っていった選手たちを「観光目的で来た」と受け取るのではなく、“勝つため”には最大限休む、オフを楽しむことが必要だと学ぶべきだろう。
<了>
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