「柏には意地でも頑張ってほしい」=福西崇史氏が語るクラブW杯の展望と意義
メキシコにはいいチームが多い
柏は開幕戦で勝利すれば、準々決勝で福西氏も注目するメキシコのモンテレイと対戦。実現すれば好ゲームが期待できそうだ 【Getty Images】
もちろんJリーグを優勝してますからね。その分、力は絶対にあるわけだし。僕はメキシコ(モンテレイ)との試合が楽しみですね。(勝ち抜いていけば)メキシコと対戦できるし、さらにはブラジル、ヨーロッパと対戦できる可能性もある。実現すればこの経験は大きいですね。またより強くなるんじゃないですか。
――福西さんは2005年のコンフェデレーションズカップに出られた際にメキシコ代表と対戦していますが、メキシコはどんなサッカーをするチームですか?
僕は一番驚きました、コンフェデで。テクニシャンというのは知っていたし、個人技があるというのは知っていたけど、逆に誰が出てもテクニシャンだし、同じようなサッカーができる。(動きが)細かいし、小柄ですけど、パスもつなげられるしテクニックもある。小柄ながらも、フィジカルも強いし、かわせるし、日本人に合うサッカーをしてくると思いますね。途中で出てきた選手でもうまいし、チームとしてもすごくまとまっていた。ちゃんとパスアンドゴーもするし、個人技だけで1人で行くのではなくて、その中でもはたいて誰かを使う、というちゃんと戦術になっている。メキシコにはいいチームが多い気がしますね。
――柏がモンテレイと対戦したら、試合はどのように進むでしょうか?
チーム対チームになるんじゃないですか。うまく守備ができれば、ハマると思います。(ボールを)つなぐのが主としてあるわけで、レイソルはカウンターもできるから。
――過去07年の浦和と08年のガンバ大阪は準決勝の段階でメキシコのチームと当たっていません。上位進出を懸けて、メキシコのチームと戦うのは貴重な経験になりそうですね
楽しみになってきましたね。うまくオークランド・シティとの初戦で慣れれば。注目度も高いですし、マスコミは日本中がレイソル一色になります。その重圧は結構なものですけど、堂々としてほしいと思います。
――ネルシーニョ監督が今まで通りの戦術で臨むのか、戦い方を変えるのか、そのさい配にも注目が集まります
自分たちのやることは決まっていると思うので、いつも通りやると思います。あとは誰を選ぶかですよね。(最終節で)茨田(陽生)を選んだように攻撃的にいくのか、バランスを取る意味で栗澤にするのか、FWも経験のある北嶋にするのか、勢いのある2人(田中、工藤)にするのか。その調子で変えていけるし、それをチームでやってきているからそんなに問題ないと思う。だからこそ(戦い方は)変えてこないと予想しています。
すごい大会ですよね。いいな、こういうのがあったら良かったな。クラブチームでやれるっていいですよ。いつも以上にやる気が出ますし。クラブでいつも通りのまま、海外のチームとできるのは、力を発揮しやすい環境もできているし、自分たちの位置も把握できる。
――ジュビロ磐田は黄金期の99年、アジアチャンピオンズリーグの前身、アジアクラブ選手権で優勝して、01年の世界クラブ選手権に出てレアル・マドリーと対戦するはずでしたが、中止になってしまったことがありましたね
僕らもボロボロになってもいいからやろうと、それを目標にしていたので、あれはショックが大きかったですよ。当時レアルも“銀河系軍団”でしたしね。そこそこやれるという自信もチームにあったから。
今回のクラブW杯の組み合わせはすごいと思います。もちろん、一発目にバルセロナとやりたい、経験もしたいという気持ちがあると思いますけど、オセアニアとやって、(勝ち抜けば)中南米と戦って、南米、ヨーロッパと戦える可能性があるのはすごいモチベーションになりますね。
――過去、日本のクラブでは浦和やG大阪が出場して、世界3位に輝きました
ガンバの試合(08年)は見に行ったんですけど、根本的に「うわ、違うな」っていうのは見えましたよね。止めて蹴る、のところから。それは対峙(たいじ)すれば選手はもっと感じてるでしょうし、リカバーの早さとかは、日本のチームとビッグクラブの力の差がすごい大きいなと。それは日本代表やほかの(国の)代表でも同じ課題だと思いますけど。それでもガンバは果敢に(攻めに)行ったから、面白かったんですよ。粉砕されながらも行ったっていうのは、日本にとっては大きかった。だからレイソルも粉砕されてもいいからやってほしい。自分たちの力を試すためにも。自分たちの力を出すことが、柏にとっても、日本にとっても、代表やほかのチームにとっても、レベルアップにつながるのではないかなと思います。
バルセロナはセスクが入ってより強くなった
コパ・アメリカ(南米選手権)ではネイマールよりもガンソが面白かった。今の流れと違うような、昔のブラジル代表を見ているような面白さはありますね。代表ではガンソはあまりフィットしていないけど、サントスではブラジルのやり方があって、ガンソを生かせるような動きをするわけだから、ガンソが生きると思います。ネイマールは若いだけに、キレはすごい。テクニックもそうですが、一瞬のスピードがあるので人は抜けますし。波はありますけどね、それは若いだけにしょうがないですけど。それをほかの選手がカバーすればいいわけだから、ネイマールを乗せると止められないんじゃないかな。
――バルセロナのサッカーの現在のレベルと魅力、特に優れているポイントや技術は何だと感じていますか?
完成系に近い。相手が嫌がる、(ボールを)取れないようなやり方で、技術含めて、試合の流れを読むというところは完成されている。相手の出方でも変えられる。取りに来たらそれをかわしてシュートまで行くし、出てこなければゆっくり回して相手をおびき寄せることもできるし。だから面白いですよ、駆け引きが見られるので。
――バルセロナで福西さんが特に注目している選手はいますか?
セスクですね。セスクが入ったからワンテンポ、リズムを速くできるし、大きく展開もできる、ダイナミックになったかなというところもある。イニエスタとかビジャとか、シャビとかメッシとか、小さくてチョコチョコっていう選手に、セスクのようなドリブルもできて、パス出せて、得点も取れてっていう変化が富んで、より強くなっちゃったなと。セスクは楽しみですね。
――バルセロナは直前に“エル・クラシコ”(伝統の一戦、10日)があり、レアル・マドリーともリーグ戦では少し差がある状況です
(タイトルを)取りに来るとは思います。クラブW杯っていうのは世界中が取りたいタイトルでもあるので、問題なくやってくるかなと思います。
――決勝のカードはサントスとの対戦が有力視されています。そのカードが実際に行われた場合、面白い試合が期待できそうですね
ただ、なんだかんだ言ってもアルゼンチンのチームだって優勝するし(03年トヨタカップ、ボカ・ジュニアーズ)、南米の試合の流れを変えられる怖さというか、そういうのが出る。ヨーロッパは強い、下馬評も高いけど、それでも勝ち切る強さが南米にはある。試合の流れはバルセロナ主体に運ぶと思います。その中でも主役はネイマール、ガンソになると思いますが、ほかの選手たちも実力はあって、名門だからあなどれないチームだと思いますよ。