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アイルランド、屈辱の日を乗り越えユーロ本大会へ
東本貢司の「プレミアム・コラム」

ユーロ本大会出場を決め、感涙の歓喜

ユーロ本大会出場を決め、ファンとともに喜びを分かち合うアイルランドイレブン
ユーロ本大会出場を決め、ファンとともに喜びを分かち合うアイルランドイレブン【写真:Press Association/アフロ】

 すでにご承知の通り、2012年欧州選手権(ユーロ)予選プレーオフで伏兵エストニアを下したアイルランド共和国代表は、晴れて明年ポーランド/ウクライナで行われる本大会出場を果たした。ワールドカップ(W杯)およびユーロの二大国際トーナメントにおいては実に10年ぶり、くしくも02年W杯“コリア=ジャパン”以来の本大会出場となる。


 ここにちょっとしたデータ上の“符号”がある。さかのぼって1992年ユーロ・スウェーデン大会の予選で、アイルランドは6戦無敗の記録を残している(ただし、2勝4分けで本大会出場ならず)。その10年後にあたる02年W杯予選では強豪オランダとポルトガルと同じグループに入ったが、ここでも無敗(7勝3分け)で乗り切り、イランとのプレーオフに勝って(惜しい! テヘランでの第2戦で唯一の敗戦)本戦に駒を進めた。


 そして今回のユーロ予選も、と言いたいところなのだが、実はグループB首位のロシアに1敗を喫している(それもホームで)――が、ドラマは今からちょうど2年前に“前倒し”で巡ってきていた。アイルランドサポーター、いや同国民ならば、忘れようにも忘れられない、あの屈辱の日の出来事――。

 10年W杯予選を無敗(!)で切り抜けたアイルランドは、プレーオフでフランスと対戦。第1戦での0−1の惜敗に続いて臨んだアウエーゲームで追いつき、決着は延長戦へ……そして明暗を分けたのが、ティエリー・アンリの“ダブルハンド・アシスト”によるウィリアム・ギャラスの、あの悪名高い疑惑の決勝ゴールだったのだ。


 当時、日本の全国紙でさえ大きく取り上げた“世紀のスキャンダル”だったが、ギャラスのゴールの無効、および再試合の実施を強硬に訴えたアイリッシュ協会(FAI)に対して、結局FIFA(国際サッカー連盟)が取った欺瞞(ぎまん)的行動の内容とその後日談を、短信なりとも伝えた“同じメディア”がどれだけあっただろうか。

 フットボール界の“世界最高統括機関”は、あろうことかアイルランドに対する「フェアプレー賞の贈呈」という“ポーズ”で事を収めようとしたのである。背景に、FIFAと気脈を通じるUEFA(欧州サッカー連盟)会長ミシェル・プラティニの影がちらついて見えたのは当然だった。無論、FAIは「失望。恥を知れ」の一言をもって丁重にその受領を拒否している。


 その怨念を乗り越えての今回の本戦出場が、ピッチ上の“リパブリックの闘士たち”はもちろん、全アイルランド国民の留飲をいかに下げさせたかは、想像に余りあるものがあろう。それほどに、対エストニア・第2戦(ホームで1−1の引き分け。第1戦は4−0の勝利)終了直後に一気に弾けた感涙の歓喜は、その様子を切り取った1枚の写真からも胸に迫るものがあった。

英国圏ではナンバー2の実力

 さて、そんな現代表の実力はどのレベルにあるのだろうか。現実に、僅差とはいえロシアに遅れをとっている。そのほかの今予選の“グループメイト”たちはいずれも格下だった。

 確かに、老練ジョヴァンニ・トラパットーニ体制になって以来(2008年5月〜)、フレンドリーを除く公式戦敗戦は、あのフランス戦と今回の対ロシアの2試合のみ。今ユーロ予選と並行して行われた“復活ホーム・インタナショナル”(正式名称:ネイションズ・カップ。アイルランドのほか、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの計4カ国が参加した総当たりトーナメント)でも、無敗・無失点で完全優勝を遂げている。つまり、英国圏ではイングランドに次ぐナンバー2の実力と言っても過言ではない。


 とりあえず、現チームのファーストイレヴンおよび主戦力を眺めてみると――:

GK:シェイ・ギヴン(35歳/アストン・ヴィラ)

DF:(右から)ジョン・オシェイ(30歳/サンダランド)、ショーン・セント=レジャー(26歳/レスター・シティー)、リチャード・ダン(32歳/アストン・ヴィラ)、スティーヴン・ウォード(26歳/ウルヴァーハンプトン=ウルヴズ)

MF:(右から)デイミアン・ダフ(32歳/フルアム)、グレン・ウィーラン(27歳/ストーク)、キース・アンドリューズ(31歳/イプスウィッチ)、スティーヴン・ハント(30歳/ウルヴズ)

FW:ロビー・キーン(キャプテン、31歳/LAギャラクシー)、ケヴィン・ドイル(28歳/ウルヴズ)


 主な控えに、キース・ファーヒー(28歳/バーミンガム)※、エイダン・マッギーディー(25歳/スパルタク・モスクワ)、ダロン・ギブソン(24歳/マンチェスター・ユナイテッド)、シェイマス・コールマン(23歳/エヴァートン)、アンディー・キュー(25歳/リーズ)、サイモン・コックス(24歳/WBA)、シェイン・ロング(24歳/WBA)、ケヴィン・キルバーン(34歳/ダービー)、リオン・ベスト(25歳/ニューカッスル)。

※イングランドでは「ファーイ」と発音されている。


 上記控えや、そのほか最近抜てきされる機会が増えつつある中には、そこそこ生きのいい若手も見られるが、やはり頼みとなるとベテラン・カルテットのギヴン、ダン、ダフ、そしてロビー・キーン中心にならざるを得ない。ファーストイレヴンの平均年齢の高さでは、たぶん今大会参加中で一、二を争うだろう。そこに根本的な悩みが見え隠れする。

東本貢司
東本貢司

1953年生まれ。イングランドの古都バース在パブリックスクールで青春時代を送る。ジョージ・ベスト、ボビー・チャールトン、ケヴィン・キーガンらの全盛期を目の当たりにしてイングランド・フットボールの虜に。Jリーグ発足時からフットボール・ジャーナリズムにかかわり、関連翻訳・執筆を通して一貫してフットボールの“ハート”にこだわる。近刊に『マンチェスター・ユナイテッド・クロニクル』(カンゼン)、 『マンU〜世界で最も愛され、最も嫌われるクラブ』(NHK出版)、『ヴェンゲル・コード』(カンゼン)。

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