「目の前にあった金メダル」逃した日本男子、打倒中国への収穫と課題=世界体操 

矢内由美子

個人では27年ぶりの好成績

大会史上初となる個人総合三連覇を果たした内村 【坂本清】

 1995年の鯖江大会以来、16年ぶりの日本開催(東京)となった第43回体操世界選手権が16日、10日間の大会の幕を閉じた。
 エースの内村航平(コナミ)を中心に、五輪と世界選手権を通じて2004年アテネ五輪以来となる団体総合の金メダルを最大の目標として大会に臨んだ日本男子は、団体総合では中国にわずかにおよばず銀メダルに終わった。しかし、内村が個人総合で09年のロンドン大会から3大会連続で金メダルを獲得。内村と同じ22歳の山室光史(コナミ)も銅メダルに輝いた。
 内村は種目別でも、最も得意とする床で金メダルを獲得したほか、鉄棒で銅メダルを手中に収めた。そして山室がつり輪で銅メダルを、さらには25歳の沖口誠(コナミ)も跳馬で銅メダルを獲得した。

 日本男子の今大会のメダルは金2、銀1、銅4の計7つで、これは具志堅幸司や森末慎二を擁し、金3、銀3、銅3を獲得した84年ロサンゼルス五輪以来の成績だ。内村は金2、銀1、銅1の計4つを獲得し、具志堅ら歴代の名選手たちと肩を並べる域に足を踏み入れた。
 期待の選手が期待通りの活躍を見せつつ、東京での開催とあってゴールデンタイムの地上波テレビ中継もあり、また、新聞各紙も連日体操の話題を大きく取り上げるなど、大いに盛り上がった大会となった。

最大の目標、打倒中国はならず

男子団体、鉄棒で落下して悔しいそうな表情を見せる田中佑典。日本はミスが響き、銀メダルに終わった 【坂本清】

 もっとも、最大の目標として掲げていた団体総合で、またしても中国の後塵(こうじん)を拝する結果となったことは残念だった。しかも予選で1位になり、決勝では予選3位の中国よりも優位なローテーションで回ることができただけに、自ら勝ち取っていた好条件を生かすことができなかったことが悔やまれる。

 敗因は「ミス」。2番目の種目であるあん馬で小林研也(コナミ)が落下。最終種目の鉄棒では田中佑典(順大)、内村とミスが続いた。いわば自滅した形だったことが余計に痛かった。
 決勝で6種目すべてに出た内村は絞り出すように言った。「ミスをしてしまうと勝てない。(田中)佑が(鉄棒で)落下してしまったことで、僕が完璧な演技をしても中国には届かなくなってしまい、集中が途切れてしまった。中国はやはり強いと感じた。決勝で(技の難度を表す)価値点を上げてきたのを見て、本当に強いと感じた」

 内村に次ぐ4種目に出た山室も「すぐ目の前に金メダルが見えていたのに」と唇をかんでいた。

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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