岡崎慎司が持つ“成り代われる才能”=目指すは世界ナンバーワンのストライカー
身軽に変身を遂げることができる
ダイビングヘッドは岡崎(左)の代名詞だが、彼の本質はそんなに分かりやすい部分ではない 【Getty Images】
「格好いい先輩の服装をめっちゃマネしてみたりするんですけど、全然うまくいかないんですよ」
迎合する後輩か、と思うとそうではない。
「サイドバックをやらされているときも、本職のFWのため、と割り切ってやっていました。きっと乗り越えられると思っていましたよ」
したたかな野心家のようにも見えるが、計算高さはない。
「家ではもう1人の子供みたいなもんですよ」
そう言って天真爛漫(らんまん)に笑う。
無邪気な子供に近いかもしれない。つまりは感情の赴くままで、とらえどころがない、という印象に落ち着く。
一生ダイビングヘッド。マスコミや大衆は分かりやすいフレーズを持ち出し、日本代表の点取り屋をキャラクター化しようとした。確かに岡崎は、どんなボールにも頭から飛び込む勇敢さを持っている。それは少年時代に身に付けたプレースタイルの1つで、彼をくくるのにもってこいのエピソードだった。
しかしながら、彼の本質はそんな分かりやすい部分にはない。岡崎という人間の核は、何者にでも成り代われる柔軟さにある。子供のように欲深いにもかかわらず、どこまでも無垢(むく)で純粋。無心になれる。それゆえ、彼は身軽に変身を遂げることができるのだ。その才能は、誰もが持ち得るモノではない。
バルセロナのFWにも匹敵する才能
「岡崎は動きに連続性があり、しかもスピードを有している。だから、相手のDFは動きを読み切れず、的を絞れない」
そう証言したのはバスク代表監督を務め、「スペイン最高のスカウティング能力を持つ」と一目置かれるミケル・エチャリだ。レアル・ソシエダのGM(ゼネラル・マネジャー)を20年近く務め、シャビ・アロンソらを発掘。あのジョゼップ・グアルディオラをして「選手分析力と戦術眼は並ぶ者がいない」と言わしめたほどの人物である。
「岡崎は素晴らしいセンスの持ち主だ」とそのエチャリは続けた。
「4−2−3−1のサイドアタッカーに攻撃面で必要とされるのは、まずマークを外し、攻撃を流動的にすることだ。サイドバックを上がらせ、ゴール中央に侵入したり、中盤の選手を使い、サイドからワンツーでゴール前に入ったり、あるいは逆サイドでパスがつながれる間に対角線上にゴール前へ走り込んだりする動きだ。その点、岡崎という選手は絶え間なく、動きや攻撃を活発化させる。どこにスタートポジションを取っていても、ゴールに迫ることができる。天性の点取り屋だね。バルセロナのダビド・ビジャ、ペドロに匹敵する攻撃センスを、この日本人FWは持っている」
スペインの名士はうなった。