W杯を目指して再スタートを切ったアルゼンチン代表

問題は最終ラインと指揮官の守備的な姿勢

W杯予選の第2戦は敵地でベネズエラに0−1と敗戦。サベーラ体制の試行錯誤はまだしばらく続きそうだ 【写真:AP/アフロ】

 一方、W杯・南アフリカ大会、そしてコパ・アメリカと引きずってきた問題は再び明らかになった。脆弱(ぜいじゃく)な最終ラインである。空中戦に強いセンターバックは皆無で、チリ戦を欠場したマルティン・デミチェリスを除いてまともなパスを出せる者もいない。ほかは皆、対人プレーは強いがテクニックは標準以下のDFばかりだ。

 まだ若いニコラス・オタメンディは長い目で見守るべきだろう。北京五輪の優勝メンバーであるニコラス・パレハのテスト、そしてインテルで丸1年ピッチから遠ざかっているワルテル・サムエルの復帰は検討した方がいい。もっとも、DFに関して希望を見いだすことができるのは国内リーグだけかもしれないが。ベレスのセバスティアン・ドミンゲス、リーベルのU−20代表ヘルマン・ペセッラらは、現代表のDF陣にはないものをもたらす可能性を秘めている。

 サイドバックの人材不足も相変わらずだ。チリ戦で先発したマルコス・ロホ(スパルタク・モスクワ)がクレメンテ・ロドリゲス(ボカ・ジュニアーズ)より優れた左サイドバックだとは思えない。だが、右サイドバックについてはパブロ・サバレタが手堅いプレーを見せた。こちらはベテランのハビエル・サネッティという選択肢もある。

 セルヒオ・ロメロが負傷欠場したチリ戦ではマリアーノ・アンドゥハルがGKを務めたが、ロメロ以上の安定感を示すことはなかった。GKではほかにボカのアグスティン・オリオンも代役候補に挙がっている。彼の背後にはラヌースのアグスティン・マルチェシン、そして昨夏にバルセロナ移籍が決まりかけたU−20代表のエステバン・アンドラーダも控えている。

 問題は選手だけではない。チリ戦ではサベーラの守備的な姿勢もあらわになった。メッシやイグアイン、ほかの有能なアタッカーを多数擁するにもかかわらず、指揮官は守備的な選手を多数起用し、メッシの周囲には最低限のアタッカーしか配置していない。
 バルセロナのサッカーを愛するアルゼンチンのファンにとって、レジスタを使わず2人の守備的MFを起用するというサベーラの考えは、今まで以上に孤立し、パスの受け手がいない状況でのプレーを強いられるメッシを目の当たりにすることを意味する。

 残念ながら、本稿を書いている時点では第2戦のベネズエラ戦の結果は分からない(※編注:アルゼンチンは敵地で0−1と敗戦)。ここで挙げた懸念を払しょくできればいいが、スタートでつまずくようだと先が思いやられる。果たして、今回はうまくいくのだろうか。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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