史上最年少で連覇確定のベッテル「僕らは本当に強いチームになった」=F1

田口朋典

史上最年少でのF1連覇を成し遂げたベッテル 【Getty Images】

 F1世界選手権第15戦日本GPは、10月9日に決勝が行われ、2番グリッドからスタートしたマクラーレンのジェンソン・バトンが逆転で今季3勝目を挙げた。タイトルに王手をかけていたレッドブルのセバスチャン・ベッテルは3位表彰台を獲得して、見事年間チャンピオン連覇を決めた。また、自己最高位となる7番グリッドからスタートした小林可夢偉(ザウバー)は、13位に終わった。

し烈な戦いはバトンが制す

 気温24度、路面温度31度、快晴の鈴鹿サーキットで決勝はスタートした。先頭で第1コーナーに飛び込んだのは、ポールポジションのベッテル。バトンはベッテルとの攻防でイン側のグリーンに片輪を落とし3番手に後退。代わって3番手スタートのルイス・ハミルトン(マクラーレン)が2番手に浮上した。

 トップに立ったベッテルは、じりじりとハミルトンを引き離すものの7周を終えて、リヤタイヤの消耗を訴え、9周目にピットイン。代わってトップに立ったバトンやフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)、マーク・ウェバー(レッドブル)らも10周目と早い段階で立て続けにピットに飛び込み、上位陣の戦略は3ストップが濃厚となった。

 セカンドスティント(※1回目のピットインから2回目のピットインの間)でもトップを守ったベッテルに対し、2番手でぴたりと追走したバトンは20周目、1周先に2回目のピットを終えていたベッテルの前でピットアウトし、逆転に成功。コース上に飛び散ったパーツの破片を処理するためにセーフティカーが導入されるも、27周目のリスタート直後からバトンは猛プッシュ。3周立て続けに1分37秒台のファステストラップを連発し、ベッテルを突き放した。

 これで余裕が出たバトンは、終盤にも次々とファステストラップをたたき出す。結局、そのまま53周を逃げ切って凱歌(がいか)を上げた。2位には3回目のピットでベッテルを逆転し、終盤の攻勢をしのいだアロンソ、3位にはベッテルが入った。

バトン「アメイジングな勝利」

 マクラーレン移籍後、雨がらみでの優勝ばかりで久々のドライコンディションでの勝利となったバトンは、「最後の5〜6周はかなりタフだった。タイヤを気遣いつつ、完走するために燃料をセーブしなければならなかったからね。でも、本当にアメイジングな勝利だった」と笑顔を見せた。

 「スタートではセバスチャン(ベッテル)にグリーンに押し出され、アクセルを戻さざるを得ず、ポジションを落としてしまった。しかし、週末を通じて僕らのペースは良かったし、このような高速のサーキットでは、ずっとレッドブル勢に対して苦戦していた。今日の勝利はチームにとっても大きな意味のある1勝だと思う。そしてなにより、素晴らしい日本のファンの前で素晴らしいレースをすることができて最高だ。今年苦しい状況にさらされた日本の人たちだけれど、鈴鹿では彼らから大きな声援をもらった。その人たちひとりひとりにありがとうと言いたいし、彼らの心に少しでも楽しい思い出を残せたならうれしいね」と振り返った。

昨年の経験を生かしたレッドブルとベッテル

 一方、勝ってタイトルを決めることこそかなわなかったが、ベッテルは3位15ポイントを追加。324にポイントを伸ばし、年間チャンピオンを手中に収めた。24歳での連覇は史上最年少となる。

 「今日はちょっとオプション(ソフト)タイヤでのパフォーマンスが前のふたり(バトン、アロンソ)に比べて良くなかったね。後半フェルナンド(アロンソ)に追いついたけれど、彼のストレートスピードがかなり速くて抜き切れなかった。まあ、それは金曜に分かっていたことだけれどね」と3位に甘んじたベッテル。

 しかし、連覇を決めたことに質問が及ぶと、「昨年とはまた違った感覚があるね。言ってみれば、昨年は驚きだった。けれど今年僕たちは1年を通じて地に足をつけ、常に次のステップに集中し続けてきた結果、今日タイトルを獲得できたという実感があるんだ。けれど、また来週には次のレースが待っているというのは不思議な感じだよ。昨年は最終戦のチェッカーを受けた瞬間にタイトルが決まり、そのままマシンを離れた期間があったのにね。でも、残りのレースが今はとても楽しみだ。僕らにはすごいマシンがあり、すごいチームとともに、また次のステップを刻むべく、次のレースで良いパフォーマンスを発揮できるよう頑張るんだ」とコメント。

 「今年、僕らのマシンは本当に、本当に素晴らしかった。それは疑う余地はない。けれど、昨年のマシンほど圧倒的ではなかったと思うんだ。ただ、今年の僕らは本当に強いチームになったと思う。昨年の僕たちは不運もあったし、愚かなミスも犯してしまったために終盤まで苦戦を強いられた。ただ、今年はいいスタートを切ったことで、その勢いを失わず、常に次のレース、次のレースと集中していけた。そこが今年と昨年の大きな違いじゃないかな。今年は本当に多くのことを学んだ。それが残りのレースでの僕らをより強くしてくれると良いね」と、喜びのうちに会見場を後にした。

 今年15戦を戦い、リタイヤは一度もなし、表彰台を逃したのも一度だけと圧倒的な強さと昨年にはなかった安定感を手にしたベッテル。残り4戦でどこまでポイントを伸ばせるのだろうか。
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著者プロフィール

1966年生まれ。大学卒業後、趣味で始めたレーシングカートにハマり、気がつけば「レーシングオン」誌を発行していたニューズ出版に転職。隔週刊時代のレーシングオン誌編集部時代にF1、ル・マン、各種ツーリングカーやフォーミュラレースを精力的に取材。2002年からはフリーとなり、国内外の4輪モータースポーツを眺めつつ、現在はレーシングオン誌、オートスポーツ誌、CG誌等に執筆中。自身のブログ“From the Paddock”(スポーツナビ+ブログで)では、モータースポーツ界の裏話などを披露している

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