濃くなるカペッロ懐疑論と有望株への期待=東本貢司の「プレミアム・コラム」

東本貢司

「夢多き代表チーム」を展望する

ダニー・ウェルベック(左)やフィル・ジョーンズ(中央)ら、若い有望株はひしめいている 【Getty Images】

 今回のユーロ本大会はイングランドにとって、いつになく意義深く、かつチーム編成に注意を要するイベントとなる。直後にあるロンドン・オリンピックに直結しているからだ。通常なら「年齢制限」によって別個に考えるべきなのだが、現在のスリーライオンズ・シニアは明らかに世代交代の過渡期にあり、場合によっては半数近いそれぞれの代表メンバーが、“連結参加”するという可能性も決してなくはない。

 実際は、各所属クラブの監督からあらかじめ強い「回避要請」が入るはずで、若干名の控え登録程度に収束するだろうが、ここではあえてそのあたりは目をつぶって「夢多き代表チーム」を大胆に展望・構築してみたい。

 GK:ジョー・ハート(マン・シティー)、DF(右から):カイル・ウォーカー(トテナム)、フィル・ジョーンズ(マン・ユナイテッド)、スティーヴン・テイラー(ニューカッスル)、レイトン・ベインズ(エヴァートン)、MF(右から):ゲイブリエル・アグボンラホール(アストン・ヴィラ)、トム・クレヴァリー(マン・ユナイテッド)、ジャック・ロドウェル(エヴァートン)、アシュリー・ヤング(マン・ユナイテッド)、FW:ウェイン・ルーニー、ダニー・ウェルベック(以上、マン・ユナイテッド)。

 これに、控えないしは代替として、ジャック・ウィルシャー、アンディー・キャロルのほか、ギャリー・ケイヒル(ボルトン)、クリス・スモーリング(マン・ユナイテッド)、ダニー・スタリッジ、ジョシュ・マッケクラン(以上、チェルシー)、アダム・ジョンソン(マン・シティー)、ロス・バークリー(エヴァートン)ら。

 無論、実際のユーロ2012代表チームはこうはいかない。なんのかんのいってもジョン・テリー(チェルシー)、リオ・ファーディナンド(マン・ユナイテッド)、スティーヴン・ジェラード(リヴァプール)、フランク・ランパード、アシュリー・コール(以上、チェルシー)ら、「トウが立ち始めた」常連を外して考えるものではない。ただ、裏を返せば、カペッロが“彼ら”のうち誰と誰を落とすか落とさないかも、一つの興味深い視点になるだろう。いわば、あと半年余りで消えてしまう「イングランド代表監督、ファビオ・カペッロ」の履歴を記憶に刻みつけるだけの価値がある“置き土産”として。

失うものの少ない「これからの若いチーム」

 つまり、“そのくらい踏み込んで”考えてみると、先々の期待も縦横に膨らんで面白いだろうというわけだ。少なくとも、オリンピック代表チームは、上記からハートやルーニーらシニア組を除いたものになるはず。その場合、今も強硬に“協力”を拒んでいるスコットランドとウェールズからの“派遣”があるかどうかも関係してくるのだが、これについては、またいずれ「時が来たときに」取り上げるべきテーマとしてリザーヴしておこう。

 昨シーズン終了後に現役引退を決意したポール・スコールズは、つとに物静かで寡黙な優等生のイメージが強かった。それが、ユナイテッドのコーチとして再出発した途端に、人が変わったように雄弁(それも、かなり手厳しい口調)になって、その都度周囲を驚かせっ放しだ。つい先日も、おしなべて関係者の反感を買ったカルロス・テヴェスの出場拒否事件について「気持ちは分かる。自分もかつてファーギー(ファーガソン監督の愛称)に逆らってツムジを曲げたことがある」と告白しながら、かつての同僚に同情を寄せていた。そんな、まさに歯に衣(きぬ)着せない率直な物言いの中に、こんなものがあった。

「近年のイングランド代表に選ばれたメンバーは、明らかにちやほやされて舞い上がっていたきらいがある。優勝候補だとおだてられて、あっさりその気になってしまうのか、緊張感に乏しい。代表キャンプ内でも意地を張るような派閥ができてしまっていた。良くてもベスト8止まり程度なのは、そのあたりに原因があるのではないか」

 だとすれば、失うものの少ない「これからの若いチーム」なら、変なプライドもなく、試合を重ねていくうちに望外の底力がわき出てきて、あっと言わせてくれる余地も期待できようというもの。「あと少し先には」などと出し惜しみしないで、今すぐにでもボーリングを実行し、その“埋蔵量”をしっかり見極めていくだけでも悪くない。そうする価値のある有望株がひしめいているのだから。

<了>

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著者プロフィール

1953年生まれ。イングランドの古都バース在パブリックスクールで青春時代を送る。ジョージ・ベスト、ボビー・チャールトン、ケヴィン・キーガンらの全盛期を目の当たりにしてイングランド・フットボールの虜に。Jリーグ発足時からフットボール・ジャーナリズムにかかわり、関連翻訳・執筆を通して一貫してフットボールの“ハート”にこだわる。近刊に『マンチェスター・ユナイテッド・クロニクル』(カンゼン)、 『マンU〜世界で最も愛され、最も嫌われるクラブ』(NHK出版)、『ヴェンゲル・コード』(カンゼン)。

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