「過去を振り返らず、今ここでできることを」=FC琉球 我那覇和樹インタビュー

宇都宮徹壱

今季よりFC琉球でプレーする元日本代表の我那覇。13年ぶりとなる故郷でのプレーに、つねに前向きな姿勢を見せている 【宇都宮徹壱】

 元日本代表、我那覇和樹が故郷の沖縄に戻って、ずい分と時間が経ったように感じるのは、私だけではないと思う。今季、JFLのFC琉球の一員となった我那覇は、けがで苦しんだ一時期を除けば、コンスタントにスタメン出場を続けているものの、その動向が話題になることはほとんどまれであると言ってよい。それは、同じ元代表でJFLクラブに移籍した久保竜彦(金沢)や松田直樹(松本、故人)と比較すれば明らかである。今季のゴール数が2つしかない(10月2日現在)ことに加えて、沖縄のサッカー事情がなかなか本土に伝わりにくいことも関係しているのかもしれない。

 我那覇といえば、川崎フロンターレ時代の2006年、J1で32試合に出場して18ゴールを挙げ、チームのACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場権獲得に大きく貢献するとともに、自身も日本代表に初招集されるなど、まさに選手時代の絶頂期を迎えていた。しかし翌07年に突然の暗転。疲労回復のための静脈注射がドーピング規定違反と認定され、公式戦6試合の出場停止処分を受けることになる。この件について我那覇本人は、一貫して無実を主張。審議はスポーツ仲裁裁判所に持ち込まれ、何とか身の潔白は証明されたものの、ピッチ上でのパフォーマンスは精彩を欠いたものとなってしまう。躍進著しいチョン・テセ(現ボーフム)に定位置を奪われ、09年にはヴィッセル神戸に移籍したものの、ここでも思うような活躍ができずに契約満了。そこで獲得の意思を最初に表明したのが、故郷のクラブ、FC琉球であった。

 川崎時代に絶頂とどん底を味わい、JFLという新たな舞台でプレーを続けている我那覇和樹。13年ぶりの故郷のピッチで、彼はどのような思いを胸にボールを追い続けているのだろうか。ホームでの試合を終えたばかりの我那覇は、白い歯を見せながら、気さくに私の質問に答えてくれた。(取材日:9月25日)

チームの土台ができて、新しい選手も融合している

――今日の松本山雅戦(0−1)を振り返っていただきたいのですが、あまりにもシュートが少なかったですね

 何本でした?

――3本です。前半が我那覇さんの1本を含めて3本、後半はゼロ

 やっぱりシュートを打たないとね。それはもっと意識してやっていく必要がありますし、個人的にも1本というのは少ないと思うので。そうですね、ちょっと悔しいですね。

――ご自身の今日のプレーについては、どう評価されていますか?

 FWはやっぱり結果、ゴールで評価されるので、その意味では今日の出来は満足していません。でもそのほかの部分では、だいぶ自分がイメージしているようなプレーができたので、そのへんは良かったと思っています。

――今季の琉球は1ケタ順位を維持していますね(後期第10節終了時点で7位)。これまで最高が10位だったことを思えば、大いに評価できると思います。好調の要因は何だと思います?

 僕は今年からですけど、これまでいた選手が土台を作ってくれていると思いますし、それプラス、今年入った選手がうまく融合できているのかなという実感はあります。

――新里裕之監督も3年目ということで、継続性もプラスされているのでは?

 そうですね。監督のやろうとしているサッカーを、みんなも頭の中で理解してプレーできているので、そのあたりは強みだと思いますし、僕がもっと監督を助けてあげられればとは思いますけど。

――監督は、宜野湾高校時代の同級生だったそうですね?

 そうです。チームメートで一緒に高校選手権に出たりしました。

――今では「監督」と呼んでいるわけですか?

 いや、僕が「監督!」と呼ぶと嫌がるので(笑)。まあ、普通に名前で呼んでいますけど。まあ、今までとはそんなに(付き合い方は)変わっていないですね。

前線のプレーに集中できないチーム事情

――今のチームでのご自身の役割について、どう考えていらっしゃいますか?

 プレー面では、やはりFWなのでゴールは求められていますし、ゴールを決めてチームの勝利に貢献するというのが、僕の中でも強いこだわりはあります。それと、ゴール前で体を張って、自分がつぶれてチャンスを作ることも心掛けていきたいです。あとはJリーグで培ってきたことを、特に若い選手に伝えていくというのは僕の使命であるとは思っています。

――今日の試合を見ていて思ったんですが、ポジション的にはワントップでしたが、前線でどんと構えるのではなく、たびたび中盤まで戻ってボールを拾って展開するプレーが多く見られました。ワントップというよりも、むしろトップ下的な仕事を求められているのでしょうか?

 そうですね。ワントップですけど、監督からは中盤で空いたスペースをうまく使ってくれということは言われているので、下がってもらって展開するとか、自分で行くとか、そのへんは意識してやっています。

――今季の我那覇さんのプレースタイルは、前を向いてガンガンとゴールに向かっていくよりも、中盤で受けてキープして起点となることが多いようですね。今季、ゴールが少ない(この時点で1ゴール)のも、なかなか前線でのプレーに集中できないからだとも言われていますが、その点についてご自身ではどうお考えですか?

 もちろんFWなのでゴール前で勝負したいというのはありますけど、そこでずっといても、なかなかボールが出て来ないというのはあります。なので、自分でも試行錯誤しながら、中盤に空いたスペースで僕が受けて、という形でね。確かにゴール前にデンといるよりは(中盤でパスの)出し手になっているという感じにはなっていると思います。とはいえ、ゴール前で受けないと点は取れないし、そのあたりが得点から遠ざかっている原因かなとは思っています。

――まあ、中村憲剛(川崎)みたいな選手がチームにいれば、話は別なんでしょうけどね(笑)

 それでも、いい選手はたくさんいるので。練習ではうまくできているんですけど、それが試合でなかなか出せないというか。もうちょっと練習中でも、みんながケンカするくらい要求し合うくらいの方がいいかなと思っていますけど。

――我那覇さんはけっこう周囲に要求する方ですか?

 僕はそこまでは言わないですね。

1/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)。宇都宮徹壱ブックライター塾(徹壱塾)塾長。

当サイトには一部アフィリエイトリンクが含まれています。

リンクから商品・サービスをご購入いただいた場合、スポーツナビに収益が発生することがあります。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント