ソフトBが独走でパ連覇!内川が流した涙の理由=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

V2達成ダ!秋山監督「ホッとしています」

優勝を果たし、涙ぐむ内川。打線の核としてチームを引っ張った 【写真は共同】

 10月1日、福岡ソフトバンクホークスはマジック1で迎えた埼玉西武戦(西武ドーム)を3対0で快勝し、2年連続15度目(前身球団を含む)のパリーグ優勝を決めた。
 胴上げ投手はプロ8年目で初体験の馬原孝浩だ。最後のアウトを確信すると、両手を高々と突き上げてガッツポーズだ。馬原を中心に出来た歓喜の輪。そこに秋山幸二監督がゆっくりと歩み寄ると、マウンドと二塁ベースの中間で背番号81の大きな身体が6度宙を舞った。

 ナインの表情はみんな晴れやかだった。喜びはもちろん、昨季の覇者でさらに前評判の高かったシーズンを勝ち抜けた安堵(あんど)感が大きかったのだろう。秋山監督もお立ち台での優勝監督インタビューは「まずはホッとしています」が第一声だった。
 しかし、その中で一人全く違う表情を見せた選手がいた。今季加入して、史上2人目の両リーグ首位打者が目前の内川聖一である。

打線の核となった内川、「涙が溢れてきて…」

 この試合でも9回表に2本目の安打を放った。ここで代走を出されて交代。仕事をやり遂げた“ヒットマン”はベンチ裏では満面の笑みだ。そして「うわ〜ヤバい。緊張してきた」などと冗談交じりにチームメイトと談笑していたのだが、ベンチに戻るとなんと神妙な面持ちで涙しているではないか。後になってワケを聞いてみた。

「ベンチに座ったら、あーこれで終わるんだ、優勝できるんだと思ったら涙が溢れてきて……もう止まりませんでした」

 内川は、秋山監督と孫正義オーナー以外では川崎宗則と小久保裕紀に続いて最後に胴上げをされた。
「周りのみんなが『ウッチー』『ウチさん』と呼んでくれて、3回胴上げをしてもらいました。自分がいいのかな……という思いもありましたが、本当にうれしかったです」

 内川が加わったことで、厚みが増したというよりも核ができたソフトバンク打線。内川が初回に打点を挙げると14勝1敗2分という“神話”も誕生した。そして序盤での得点を守り切るのが今季の勝ちパターンの王道。この日までの80勝のうち、71勝が先発投手の白星。今季から先発転向した攝津正が12勝をマークするなど、先発ローテ陣は見違える活躍を見せた。

日本一まであと2回、ビールかけを

 圧倒的な強さで、優勝を決めたのは今季133試合目。2位を13ゲームも引き離しての独走だった。このまま10ゲーム差以上の差をつけてシーズンを戦い終われば、1965年の前々身の南海ホークス以来、46年ぶりの独走劇である。

 王貞治球団会長が「強い。素晴らしいチームになった」と太鼓判を押せば、主将の小久保裕紀も「99年と00年にも連覇をしたが、今のチーム力の方が上」と胸を張る。
 今年のソフトバンクならば、04年のプレーオフ導入以来7度挑戦して突破できなかったCSの壁を越えられるはずだ。
「日本一まであと2回、ビールかけをやろうや」
 秋山監督の号令に、若鷹軍団は威勢よく声を上げた。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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