福岡にもあった「再生工場」 ホークスで復活した男たち
鷹詞〜たかことば〜

首位快走も計算外だらけ

かつて戦力外も経験した金澤が、防御率0点台の活躍でチームを支えている
かつて戦力外も経験した金澤が、防御率0点台の活躍でチームを支えている【写真は共同】

 リーグ連覇へ首位を快走する福岡ソフトバンク。ある意味、開幕前の下馬評どおりかもしれないが、大方の予想と実際の戦いぶりはずいぶん違ったのではないか。


 今季の福岡ソフトバンクは大型補強を敢行した。カブレラや内川聖一を加えた超強力打線が最大のウリだった。しかし、シーズン中は故障者が続出。また、統一球の導入により、極端な投高打低のシーズンとなったため、今季の好調を支えているのは12球団トップの防御率2.35を誇る投手陣の頑張りである。

 だが、投手陣にしても決して安泰ではなかった。問題はリリーフ陣だ。昨季までの2年間は攝津正、ブライアン・ファルケンボーグ、馬原孝浩の「SBM」トリオで鉄壁リレーを築いてきたが、今季は攝津が先発に転向。何より計算外だったのがファルケンボーグと馬原が今季2度ずつ登録を抹消されたことだ。馬原は現在も2軍調整中である。


 それでも、ロースコアの僅差が多い今シーズンを何とか勝ち抜いてきたのは、1度はプロ野球選手としての働き場所を失いかけた男たちの“奮投”があったからだ。

防御率0点台、13年目・金澤の活躍の“ナゼ”

 少し前に球界で流行った言葉が、一番よく当てはまるのではないか。「ホークス再生工場」である。

 その代表格が13年目の金澤健人だ。98年ドラフト2位で阪神に入団。02年に50試合、リーグ優勝した03年には36試合に登板したが、07年に北海道日本ハムにトレード。翌年には戦力外通告を受けてしまった。09年はオリックスにテスト入団するも、昨季開幕後にソフトバンクへトレード移籍した。

 4球団を渡り歩いた右腕が、今季ここまで39試合に登板して防御率はなんと0.84をマークしているのである。夏場になって好調ぶりは本格化。9月3日の試合で失点したが、それは6月12日以来のことだった。さらに、7月16日から8月23日までは自身14試合連続でヒットも許さない快投も見せた。


 何が変わったのか――それを金澤に尋ねても「何も変わらない」という。しかし、話を進めていくうちに、戦力外とトレードを経験した男にしか分からないであろう胸の内に秘めた思いを明かしてくれた。

「技術うんぬんじゃなくて気持ちの部分だと思う。このチームの中で生き残っていかないといけないという気持ち。それはどこにいた時でも同じなんだけどね。ホークスには見えない何かがあるんじゃないかな(笑)」


 それを具体化すべく斉藤学投手コーチにも話を聞いた。

「ホークスの場合、投手陣のレベルが非常に高い。他球団から来てその中で生き残っていくのは大変なことだが、そうしなければユニホームを着ていくことはできなくなるわけだから」

 また、チームカラーが他球団から来た選手には刺激になっているのではないかとも言う。

「ある選手がホークスの結束力に驚いたようだった。特に投手陣はみんな仲が良い。でも、ただの仲良しではなく、互いが励まし合い、高め合っている。杉内(俊哉)と和田(毅)の関係がまさにそうだし、カズミ(斉藤和巳)が先頭に立っていたころもそう。また、チーム全体の勝利への執着心がすごいとも言っていた。シーズンは長いから負けることもある。でも、ホークスは1つの負けを簡単に受け入れて『切り替えればいいや』としない。心底悔しがって、明日へとつなげていく。そうして高め合う中で、彼らの良い部分が出ているのではないかな」

かつてのドラ1やWBC出場者も

 中継ぎの立役者は金澤だけではない。03年ドラフト自由枠で横浜に入団し、やはり昨季開幕後に移籍してきた吉川輝昭もここまで32試合に登板して防御率2点台の活躍。当初は敗戦処理が多かったが、自らの好投で信頼を勝ちとり、ここ最近は勝ちパターンでの投入が多い。


 さらに昨オフに巨人を戦力外になった、06年のWBC出場経験もある大ベテランの藤田宗一も15試合に登板。通算600登板の大台にあと4まで迫っている。

 決して巨大戦力だけで戦ってきたわけではない福岡ソフトバンク。「中継ぎは決して目立たない。タイトルや表彰に絡むことはまずないからね」(金澤)。シーズンは間もなく最終盤に突入する。歓喜の瞬間を迎えたとき、彼らの活躍があったことをぜひ覚えていてほしい。


<了>

田尻耕太郎
田尻耕太郎

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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