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北朝鮮代表、日本戦に賭けるさまざまな思い
世界を知った選手たちにもはや弱小の面影はない

日本と北朝鮮の因縁

約6年半ぶりの来日となる北朝鮮代表。多くの在日同胞たちが駆けつけ、選手たちを歓迎した
約6年半ぶりの来日となる北朝鮮代表。多くの在日同胞たちが駆けつけ、選手たちを歓迎した【写真は共同】

 そこに重苦しい空気はなかった。8月29日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の首都・平壌から北京経由で羽田空港へ降り立った北朝鮮代表の選手たち。当初は日本政府が入国を許可するのかという心配もあり、空港にはおびただしい数の警備員がいて重々しい雰囲気が漂っているのではと勝手に想像していた。


 だが、現場の雰囲気はそれとはまったくかけ離れたものだった。

 到着ゲートには、9月2日のワールドカップ(W杯)・アジア3次予選で日本と戦う北朝鮮選手たちを出迎えるため、多くの在日同胞たちが駆け付けていた。その中には、南アフリカW杯を戦ったボーフムのチョン・テセ、柏レイソルのアン・ヨンハ、ベガルタ仙台のリャン・ヨンギ、そして新たに代表入りしたセレッソ大阪のキム・ソンギらの姿もあった。彼らは来日した北朝鮮の選手たちと笑顔で抱き合い、戦友との再会を心の底から喜んでいた。


 同国代表の来日は、ドイツW杯アジア最終予選で日本と対戦した2005年2月9日以来、約6年半ぶりだ。この時の北朝鮮は1−1で迎えた後半ロスタイムに大黒将志に決められ、1−2で敗れている。3次予選の初戦が日本に決まってから、当時の試合がどうしても頭から離れない。それは今回の北朝鮮代表が日本との因縁をさまざまなシーンで感じているに違いないからだ。

ジーコジャパンを苦しめた監督が復帰

 6年前のチョン・テセは、朝鮮大学校のサッカー部所属。Jリーグのスカウトにも目に留まらない全くの無名選手だった。

「あの日、埼玉スタジアムで見た光景は今でも忘れません。敗れはしましたが輝かしい舞台で、日本代表と対等に戦う誇らしい朝鮮代表。その中には同じ在日選手のアン・ヨンハ、リ・ハンジェ(FC岐阜)が名を連ねていましたが、心の底からうらやましかった。2人がピッチで戦う姿を見て、代表への思いがもっと強くなりました」


 観客席から試合を見るしかなかったチョン・テセが、次は同じ埼玉スタジアムで日本と戦うことになった。そこに賭ける思いは人一倍強い。

「あれから6年がたちましたが、日本代表と対戦したのは08年の東アジア選手権での一回だけ。その試合でゴールは決めましたが、それ以降も何度か対戦してもよかったと思います。チャンスは2回あったのですが、去年の東アジア選手権と前回のW杯最終予選。前者は予選で負けてしまい、後者は抽選で2分の1を外しました。対戦が少し遅過ぎた感じもあります。でも、キャリアも折り返しに差しかかった時点で、当時夢見ていた埼玉スタジアムでプレーできるのは、因縁というよりも縁を感じますね」


 そして、代表チームで最年長となったアン・ヨンハも日本との縁を感じていた。

「もちろん、6年前の試合は忘れていません。だからといって因縁や雪辱というよりは、楽しみの方が強いですね。南アフリカが僕にとっては最後のW杯になると思っていましたが、結果についてはどこかで悔しさが残っていて……。それで、3次予選で日本と同じ組になり、こうして代表にも呼ばれてからは、次こそ本当に最後のW杯の舞台にしたいと思っています。まずは日本戦でしっかり結果を残したい」


 そして何より雪辱を果たしたいのが、今年2月から代表指揮官に就任したユン・ジョンス監督だろう。6年前、ジーコジャパン相手に引き分けに持ち込めるところを、アディショナルタイムで決められて敗れたのだから、苦い思い出を払しょくしたいに違いない。

 ユン・ジョンス監督は05年のW杯アジア最終予選敗退後、国内でユース代表の監督を務めるなど、若手の育成に着手していた。そんななか、南アフリカW杯では実質「5バック」という超守備的な戦術を駆使したキム・ジョンフンが指揮を執っていたのは記憶に新しい。今年1月のアジアカップでは、U−20W杯での監督経験もあるチョ・ドンソプが4−4−2や4−5−1などを試し、ベテランと若手の選手たちをテストしていたが、最終的にユン・ジョンスが代表監督に返り咲いた。


 その理由について、在日本朝鮮人蹴球協会理事長で、朝鮮サッカー協会副書記長を務めるリ・ガンホンはこう語る。

「ユース育成の実績もさることながら、彼が育てた若手がA代表にも選出されています。ベテランの中にも彼の指導を受けていた選手がいるので、選手を把握しているという点では適任です。彼は国内では5本の指に入る指導者として認知されており、手腕には定評があります」

キム・ミョンウ
キム・ミョンウ

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

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