“常勝”レッドブルと“中堅”ザウバーを分けたもの 迅速対応で勝利したベッテル、無線届かず失速した可夢偉=F1
ワンツーフィニッシュを飾ったレッドブルのベッテル(中)とウェバー(左)。チームとしての完成度の高さを見せた 【Getty Images】
前半戦の終盤にはマクラーレン、フェラーリの猛追を受けていたレッドブルのセバスチャン・ベッテルが、4戦ぶりの今季7勝目をマーク。2年連続のチャンピオン獲得に向け、大きく一歩前進した。
チームを苦しめた天気とタイヤ
レッドブル陣営も通常では考えられないような厳しい対応を迫られた。
スタートで大きく出遅れてポジションを下げたマーク・ウェバー(レッドブル)がわずか4周目でピットインしたことは当然としても、ニコ・ロズベルグ(メルセデスGP)をかわしてトップを走行していたベッテルを6周目に呼び戻すなど、当初の想定にはなかったことだろう。
ピットインのタイミングが勝敗の分かれめ
SCが入る4周前にピットインしていたフェラーリのフェルナンド・アロンソは、チームの判断もあり、ここでコース上に留まりトップに浮上。逆にSC導入時点でトップを走っていたベッテルは7周しか走行していないにも関わらず、首位の座を捨ててピットに入り、2度目のタイヤ選択を選んだ。
だが、ベッテルはこのピットインによって、大きくポジションを落とすことなく3番手でコースに復帰。リスタート後に前のウェバーをかわすと、翌周にはアロンソを捕らえてしまう。ピットでのロスタイム、タイヤの消耗と残り周回数、コース復帰時のポジションなど、複雑な情報すべてを網羅した上で、短時間でベストな判断を下したレッドブル、そしてベッテルの柔軟な対応力の勝利だった。
一方のアロンソはレース後、SC時にコース上に留まるというチームの戦略について「自分のタイヤの状況は良く、あの時点の判断として決して間違いではなかった」と語っているが、終盤にウェバーだけでなく、後方から追い上げて来たジェンソン・バトン(マクラーレン)の後塵(こうじん)までも拝し、表彰台を失うこととなった。これは少なからず、このときの判断に原因があったと言わざるを得ないだろう。
結果として、またしても消耗の激しいピレリタイヤがレースをドラマティックに演出することとなった。ピレリは一連のブリスターの原因を「いくつかのチームのセットアップがタイヤの内側に負荷が掛かるものだったため」としているが、レースを面白くする、として今季登場したこの“ピレリ・スパイス”。今回のベルギーではやや効き過ぎたようである。
届かなかった無線、悔やまれる結果となった可夢偉
激しく競り合うハミルトン(左)と可夢偉。この後、激しい接触が起きた 【Getty Images】
アタックのタイミングの違いもあり、予選でまたしても僚友セルジオ・ペレス(ザウバー)に敗れたものの、迎えた決勝ではロケットスタートで一気にポジションアップ。フロントウイングにダメージを負ったが、2ストップでの上位進出を狙い、一時は4位を走行するなど、序盤は好レースを展開していた。
そこで起きてしまったハミルトンとの接触。マシンにダメージを負った影響からか、可夢偉のペースは上がらず、12位でフィニッシュすることになってしまった。
ハミルトンとの接触については、ハミルトン自身がレース後に謝罪したように、可夢偉に非はないだろう。だが、その後に起きたSC導入時のピットインが1周遅れたことは悔やまれる。4位を走っていた可夢偉が、ピットインからコースに復帰したとき、順位は14位まで落ちてしまっていた。ザウバーは無線でピットインを指示したというが、その無線はコクピットの可夢偉には届かず、彼のポイント獲得の可能性は消えてしまった。これが単純なコミュニケーションミスで片付けられるものなのかどうか。大きな意味でのチーム力向上が、今のザウバーにとって必要なのかもしれない。
<了>
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