後半戦は三つどもえの大混戦!? レッドブル&ベッテル、追撃を振り切れるか=F1

田口朋典

前半の11戦で6勝を挙げたベッテル、圧倒的大差でランキング首位を走る 【Getty Images】

 約1カ月におよんだ夏休みを終え、いよいよ今週末から後半戦に突入する2011シーズンのF1世界選手権。前半戦はレッドブル(チームランキング1位)とセバスチャン・ベッテル(ドライバーランキング1位)によるワンサイドゲームとなったが、果たして後半戦はどうなるのだろうか。

マシンの欠点を修正してきたマクラーレン

 前半の11戦中、6勝をマークしたベッテルは、若き王者として強さを周囲に植え付けることに成功した。ポイントリーダーの座を一度も譲ることなく、ランキング2位のマーク・ウェバー(レッドブル)に85ポイントもの大差をつけている。若き日のアイルトン・セナ(※総合優勝3回)やミハエル・シューマッハ(※総合優勝7回)といった名ドライバーに比肩するほどの高い評価を受けるのも当然といえば当然だ。

 だが、イギリス、ドイツ、ハンガリーと続いた前半戦終盤の3戦では、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)、ルイス・ハミルトン、ジェンソン・バトン(ともにマクラーレン)の後塵(こうじん)を拝し未勝利。ドイツGPでは今季初めて表彰台を逃す結果となった。
 F1解説でおなじみであるノバエンジニアリング・森脇基恭氏は、要因のひとつとして、レッドブル、マクラーレン、フェラーリという3強のマシン格差のきっ抗を挙げる。

「レッドブルの速さの鍵は、エアロダイナミクス(※コーナーを曲がるために必要な下向きの力であるダウンフォースを得るための仕組み。ダウンフォースの数値が高ければコーナーでの安定度が増す)としかいえない気がします。高速コーナーでの安定性と、可変リアウイングの使用効果を見ても、間違いなく他のチームの2枚上を行っている状態で開幕を迎えたといえるでしょう」

 だが、森脇氏はマクラーレンの急速な追い上げを感じていたという。

「マクラーレンは、自分たちの欠点を見つけて修正する力はピカイチです。シーズン前のテストではレッドブルに2秒近く遅かった。それが開幕戦でレッドブルをコピーしたエキゾースト(※排気ガスを放出させる仕組み)を用意して肉薄し、前半戦終了間際には、ついに横に並んだ感じがします」

 マクラーレンが施した開発の方向性がピッタリ合っていたと推察する森脇氏は、エアロダイナミクスを改善するために犠牲となり、足周りが硬い点はいただけないとしながらも、「それでも(マクラーレンが)車を進化させる開発力は抜群です」と高く評価する。

開発の努力が報われつつあるフェラーリ

序盤は出遅れたものの、イギリスGPでの優勝など4戦連続の表彰台と速さを見せるアロンソ 【Getty Images】

 一方、アロンソがイギリスGPで1勝を挙げたフェラーリはどうか。

 「今季のフェラーリはオーソドックスにまとめることで、結果的に他チームより優位に進めようとしたのですが、世の中甘くはなかった。彼らが今季を前に予想していたダウンフォースより、はるかに高い数値をレッドブルが獲得していることに気付いたのは開幕戦。タイヤに優しければ今年のピレリタイヤを制御できると思ったことも失敗でしょう。圧倒的なダウンフォース不足を思い知らされ、『ともかく予選で前へ』を掛け声にダウンフォース獲得に向けた努力が、ようやく報われたのがイギリスGPでした。そこまでアロンソに水をあけられていたフェリペ・マッサ(フェラーリ)が速くなったことが車の進化を物語っています」

 フェラーリ浮沈のカギもまた、エアロダイナミクスであったというわけだが、残る後半戦の3強勢力図に大きな変化が訪れることはないだろう、と森脇氏は見る。

 「後半戦は大混戦で、マクラーレンが有利になり、レッドブルは苦戦を強いられるも、フェラーリはこの2強に一歩およばす……、という展開で、結局凱歌(がいか)を上げるのはレッドブルではないでしょうか。ただし……」と氏は続ける。

 「心配は他の車両の後ろを走行すると、最強に見えるレッドブルのマシンに“切れ”が見られなくなる点です。他車の航跡(Wake)に入ると、彼らのマシンは本来の空力性能が発揮できない気がします。これがウェバーが後方に沈んだ時のあがき、ベッテルが前車を抜こうとした時のもたつきに見えます」

 万全に見えるレッドブル&ベッテルにも死角あり。そのウィークポイントを突けるだけ、マクラーレンとフェラーリが肉薄できるかどうかが勝負の分かれ目になりそうだ。

1/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。大学卒業後、趣味で始めたレーシングカートにハマり、気がつけば「レーシングオン」誌を発行していたニューズ出版に転職。隔週刊時代のレーシングオン誌編集部時代にF1、ル・マン、各種ツーリングカーやフォーミュラレースを精力的に取材。2002年からはフリーとなり、国内外の4輪モータースポーツを眺めつつ、現在はレーシングオン誌、オートスポーツ誌、CG誌等に執筆中。自身のブログ“From the Paddock”(スポーツナビ+ブログで)では、モータースポーツ界の裏話などを披露している

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント