後半戦は三つどもえの大混戦!? レッドブル&ベッテル、追撃を振り切れるか=F1
前半の11戦で6勝を挙げたベッテル、圧倒的大差でランキング首位を走る 【Getty Images】
マシンの欠点を修正してきたマクラーレン
だが、イギリス、ドイツ、ハンガリーと続いた前半戦終盤の3戦では、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)、ルイス・ハミルトン、ジェンソン・バトン(ともにマクラーレン)の後塵(こうじん)を拝し未勝利。ドイツGPでは今季初めて表彰台を逃す結果となった。
「レッドブルの速さの鍵は、エアロダイナミクス(※コーナーを曲がるために必要な下向きの力であるダウンフォースを得るための仕組み。ダウンフォースの数値が高ければコーナーでの安定度が増す)としかいえない気がします。高速コーナーでの安定性と、可変リアウイングの使用効果を見ても、間違いなく他のチームの2枚上を行っている状態で開幕を迎えたといえるでしょう」
だが、森脇氏はマクラーレンの急速な追い上げを感じていたという。
「マクラーレンは、自分たちの欠点を見つけて修正する力はピカイチです。シーズン前のテストではレッドブルに2秒近く遅かった。それが開幕戦でレッドブルをコピーしたエキゾースト(※排気ガスを放出させる仕組み)を用意して肉薄し、前半戦終了間際には、ついに横に並んだ感じがします」
マクラーレンが施した開発の方向性がピッタリ合っていたと推察する森脇氏は、エアロダイナミクスを改善するために犠牲となり、足周りが硬い点はいただけないとしながらも、「それでも(マクラーレンが)車を進化させる開発力は抜群です」と高く評価する。
開発の努力が報われつつあるフェラーリ
序盤は出遅れたものの、イギリスGPでの優勝など4戦連続の表彰台と速さを見せるアロンソ 【Getty Images】
「今季のフェラーリはオーソドックスにまとめることで、結果的に他チームより優位に進めようとしたのですが、世の中甘くはなかった。彼らが今季を前に予想していたダウンフォースより、はるかに高い数値をレッドブルが獲得していることに気付いたのは開幕戦。タイヤに優しければ今年のピレリタイヤを制御できると思ったことも失敗でしょう。圧倒的なダウンフォース不足を思い知らされ、『ともかく予選で前へ』を掛け声にダウンフォース獲得に向けた努力が、ようやく報われたのがイギリスGPでした。そこまでアロンソに水をあけられていたフェリペ・マッサ(フェラーリ)が速くなったことが車の進化を物語っています」
フェラーリ浮沈のカギもまた、エアロダイナミクスであったというわけだが、残る後半戦の3強勢力図に大きな変化が訪れることはないだろう、と森脇氏は見る。
「後半戦は大混戦で、マクラーレンが有利になり、レッドブルは苦戦を強いられるも、フェラーリはこの2強に一歩およばす……、という展開で、結局凱歌(がいか)を上げるのはレッドブルではないでしょうか。ただし……」と氏は続ける。
「心配は他の車両の後ろを走行すると、最強に見えるレッドブルのマシンに“切れ”が見られなくなる点です。他車の航跡(Wake)に入ると、彼らのマシンは本来の空力性能が発揮できない気がします。これがウェバーが後方に沈んだ時のあがき、ベッテルが前車を抜こうとした時のもたつきに見えます」
万全に見えるレッドブル&ベッテルにも死角あり。そのウィークポイントを突けるだけ、マクラーレンとフェラーリが肉薄できるかどうかが勝負の分かれ目になりそうだ。