織田裕二氏が語る『世界陸上の魅力』=ポイントは「暑さ」と「時差がない」こと

ISM

男子100メートル、200メートルで世界記録を持つボルト。4×100リレーも含めて3冠に期待がかかる 【Getty Images】

 8月27日から9月4日にかけて韓国・テグで開催される世界陸上。男子100メートル、同200メートル世界記録保持者のウサイン・ボルト(ジャマイカ)、女子棒高跳び世界記録保持者のエレーナ・イシンバエワ(ロシア)らのほか、日本からは、2004年アテネ五輪金メダリストである男子ハンマー投げの室伏広治(ミズノ)、前回ベルリン大会で銅メダルを獲得した男子やり投げの村上幸史(スズキ浜松AC)、昨年アジア大会(中国)で女子100メートル、同200メートルの二冠に輝いた福島千里(北海道ハイテクAC)らが出場する。

 日本と時差がほとんどない韓国で行われる今大会はTBS系列で独占放送。大会番組のメーンキャスターを務める俳優の織田裕二さんが、注目の選手や大会の見どころを語ってくれた。

 以下、織田さんの会見でのコメント。

ほとんど分からないまま始めた「世界陸上」

――大会番組のメーンキャスターを務めるのは7回目。最初と比べて陸上競技に対する見方はどのように変化したか?

 もともとは陸上競技というものが、ほとんど分かっていませんでした。学校でやっていた50メートル走、幅跳びなど、体力測定の一環として経験したぐらい。スポーツは大好きでしたが、野球、ラグビーといった球技の方が興味がありましたね。陸上競技は、ひたすら走るとか、跳ぶとかだけで、あまりゲーム性がないものなのかなと思っていたぐらいです。

 ただ、世界陸上の中継に関わり、陸上競技を知っていくにつれ、100メートル走でも、「スタート」「中間」「ゴール」で走り方が違うといったことが分かっていくわけです。ほかにも例を挙げると、男子棒高跳びの世界最高の選手は6メートルを跳ぶわけですが、6メートルという高さは、よくよく考えてみると「えっ?」と思うほど本当に高い。

 世界陸上の放送を始めた当初は、選手たちのすごさを分かりやすく伝えるため、三段跳びのジョナサン・エドワーズ選手(英国)を『スクランブル交差点を3歩で渡る男』と表現したり、身近なものを使って例えていました。そういったところからスタートして、自分もだんだんと陸上というものに対して理解を深めていきましたね。

 そして今は、キャスターを務め始めてから14年が過ぎ、「陸上に初めて触れる人」が感じる面白さも分かるし、もちろん知らないことはまだまだたくさんありますが、「マニアックに掘り下げて見ている人」の視点も分かるような気がしています。

 また、世界陸上は2年に1回の大会ですから、選手たちも血眼になってやってきます。その『熱』がすごいですよね。「日本の選手、頑張れ!」だけではなくて、『世界の一番』がどういったものなのかじかに感じられる、すごくいい機会だと思います。僕自身も、こんなに長くキャスターを続けられるとは思ってなかったですし、本当に奥が深いなと感じています。

好記録が予想される注目選手は?

織田さんも注目するルディシャ。男子800メートルの世界記録保持者だ 【Getty Images】

――大会の注目選手、世界記録に近い選手は?

 大会前の取材で、ボルト選手(男子100メートル、同200メートル)、イシンバエワ選手(女子棒高跳び)、アリソン・フェリックス選手(米国:女子200メートル、同400メートル)という、今大会で注目の3選手にロングインタビューをしてきました。

 みんな世界の頂点にいる選手だけあってすごくパワフルで、話しているだけで楽しいというか……。僕は普段インタビューされる側なので、インタビューする側の胃の痛さもよく分かりました(笑)。今回ボルト選手は謙遜(けんそん)していますが、どうなるか楽しみですね。

 あとは、男子800メートル世界記録保持者のデイビッド・ルディシャ選手(ケニア)。彼はここ2年ぐらいで一気に台頭してきて、この選手を知っている人はかなりな陸上好きだと思いますよ。ケニアの陸上チームの中でも背が高くて、なぜだか目立つんです。なんて言っていいのか……、例えば王貞治さんを思い起こさせるような、不思議な威厳があり、侍的というか、正座が似合いそうというか、『静』の雰囲気を持つ選手です。近寄りがたいオーラもありますし、カリスマ的な存在ですね。

 女子走り高跳びのブランカ・ブラシッチ選手(クロアチア)にも注目ですね。とても期待しているし、世界記録に非常に近い選手だと思います。でも彼女には、最近ライバルが出てきちゃいまして……、そのあたりは番組を通して詳しく伝えていきたいと思います(笑)。
 彼女は、前回大会ではオレンジのユニフォームが非常によく似合っていて、美しかった。ただ、今回取材する機会があったのですが、近くで会うと身長が2メートル近くあり、ちょっと威圧感を覚えて怖いぐらいでした。女性に恐怖を感じたことは一度もなかったのですが、身長がボルト選手と同じぐらいですからね。彼女は193センチと言っていますが、実際は195センチぐらいあるんじゃないかな(笑)。選手の身長は自己申告なので、プロフィールと実際に会った印象が違うことも時々ありますね。

 あとは……、ひとり一人名前を挙げていくとキリがなくなっちゃいますね(笑)。なにしろ、世界中から2000人ぐらいの選手が出てくるので、僕も勉強してもカバーしきれない選手が出てきちゃうと思います。そして、今大会では安定して確実に勝つだろうなと思える選手が、あまり思い浮かばないんですよね。前回大会では、イシンバエワ選手が『記録なし』に終わったように、一発勝負では何が起こるか分からないし、誰も注目していなかった選手がサプライズを起こすというのも、大会の醍醐味(だいごみ)だと思いますね。

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント