石川遼、スイング改造がもたらす光と闇

メジャー2戦連続の予選落ち……

メジャー今季最終戦「全米プロ選手権」で、石川は通算17オーバーで予選落ちとなった 【写真は共同】

 今季世界4大メジャー最後の大会となる「全米プロ選手権」で、石川遼は予選通過の4オーバーに13ストロークも及ばない2日間通算17オーバーという大差で予選落ちを喫してしまった。
「全米プロ選手権」の前週に行われた世界選手権「ブリヂストン招待」では、優勝争いの末に海外ツアー自己最高の4位タイという成績を収め、石川自身も「意外とやれる」と実感し、「世界の選手たちと優勝争いを演じてみたい」と意気込んで臨んだメジャー大会だっただけに、そのショックは大きかったはずだ。

 4月の「マスターズ」では、3年連続の出場で初めて予選通過を果たし20位タイ。開催ぎりぎりになって、世界ランキング50位以内の資格で出場権を得た6月の「全米オープン」では、前年の33位タイを上回る30位タイでフィニッシュ。だが、7月の「全英オープン」は147位タイで終わり、今回の「全米プロ選手権」でも147位と下位に低迷したまま2日間で予選落ちとなっている。

昨年11月から取り組み始めたスイング改造

 世界メジャーばかりではなく国内ツアーでも、優勝争いをした週の次には、一転して予選落ちと好不調の波が大きいのが今季ここまでの石川の特徴だ。
「大きなトーナメントが2週続くと調整が難しい」と石川が言うように、連戦の疲れもあるだろう。渡米前の「サン・クロレラ」での予選落ちについて、「神様が休めと言っているのでしょう」とも語っていたものだ。しかし、調子の波は、疲ればかりではなく、昨年11月から、取り組み始めたスイング改造が影を落としていたように思えてならない。

 石川のスイングは、小学2年生の時から一貫して父の石川勝美氏の指導によって作り上げてきたものである。昨年オフのタイ合宿の折に、勝美氏は「私が考えて作ったスイングの型にようやくはまってくれるようになった」と言っていた。つまり、勝美氏の目には、石川のスイングが完成の域に達したと映っていたのである。
 ところが、昨年11月に石川はタイガー・ウッズのスイングに触発されて、ボールの位置を1個半から2個ほど左に置くという改造を始めてしまった。ちなみにこのスイング改造は、タイガーが取り組んでいるアドレスから体重を左足に乗せておく、いわゆる「左1軸スイング」と解説するメディアもあったが、石川自身にはそんな意識はまったくなく、トップで右に体重を乗せ、ダウンスイングで左へ移動するというこれまでのスイングイメージの延長線上から外れるものではない。

 勝美氏が作ってきたスイングは、上体がトップ・オブ・スイングになる直前に左足が左へ踏み込みダウンスイングを開始するというものだが、ボールの位置がより左になると、その踏み込みをさらに大きくしなければならないばかりか、タイミングも含めて、さまざまな部分を変えなければならない。
「確かにボールを今より左に置けば、スイングアークは大きくなります。しかし、タイガーと遼とでは体格がまるで違うんです」と息子の着眼に対して消極的だった勝美氏だが、「遼がやると言うのですから、やるしかないでしょう」と不承知ながら協力するともらしていた。スイングアークとはクラブヘッドが描く円。その円が大きくなるほど、ヘッドの動きはより直線に近づきボールは曲がりにくくなる。

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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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