佐藤嘉洋、90分独走インタビュー=クラウス戦勝利の翌日に聞いたK−1と格闘技界のこれから
魔裟斗にあって、佐藤になかったもの
現役をスッパリと引退した魔裟斗(左)。一方の佐藤は未だにトップ選手として強豪と戦い続けている 【t.SAKUMA】
僕は大事なところで負けてますからね。カリスマは負けてはいけない。人智を超えた強さがないと。あの人は結果を出しているんで。結果だけ見たら雲泥の差。僕は世界2位が最高で、あの人は世界を2回獲っている。実績において差がありますからね。
――魔裟斗さんにあって佐藤さんになかったものとは。
う〜ん……、なにが違ったんだろう……、執念は自分もあると思うんですけどね。ただ、もしかしたら、もう一段上をいっているのかもしれない。あの人に限らず、クラウスやアンディ・サワーも。僕は、そこのギリギリのせめぎ合いのところで負けが多いので。そこを突き破ってさらに上にいけるのか。突き破れずに終わっていくのか。
ドラゴとの一戦では判定負けを告げられるとその場に座り込んだ 【t.SAKUMA】
ドラゴに負けた時は凄く反響があったけど、あれは僕が本気でここで勝たなきゃ終わりだと思って戦ったからこそ、負けて喜ぶ人もいたのではないですか。ただ、何を目指して戦うかっていうのは簡単で、プロはそれで金を稼いでるわけです。勝てば2000万ですよ。どっちを選ぶか、それは勝つ方を選ぶと。だからK−1はチャンピオンが一番ファイトマネーが高い。そこだけは競技制になっている。選手は簡単ですよ。それを目指せばいい。K−1のファイトマネーをMVP投票で決めるよっていうことになったら、そういう戦いをすればいい。ただ、僕はそうなったら出ないかもしれない。それは、チンドン屋と変わらないので。やっぱり僕もK−1を6年やってきたので、競技として根付いてほしいと思っています。
――K−1が競技として根付くのにはどうすればいいですか。
一回破壊されているわけですから……
――破壊されていますか。
現在の状況はされていますね。ここから、みんなで協力していくしかないですね。新たにブランディングから。
――具体的にはどのようにすればいいと思いますか。
そうだな……、難しいですね……。ビジネスとして成り立つのは地上波が重要だと思います。いくら競技を目指すと言ったって利益がでなければしょうがない。ただ、ん〜……、どうすればいいのか。これは一度ちゃんと考えておきます。
6月のK−1MAX。オープニングの時点ではまだ客席は埋まっていなかった 【t.SAKUMA】
僕らも理想ばっかり言っていてはいけないんですよね。現実につきつけられているもの、例えば観客の入場者数も胸に刻んでおかなければならない。選手は練習も大事だけど、草の根活動でもプロモーションとかやらないといけないし。
――リングに上がる選手と、主催者やマスコミとで一番違う感覚は観客入場数への意識だったりもすると思います。昨日の大会、あのメンバーで代々木第2体育館というのは少し寂しい気もします(当日主催者発表・3195人超満員札止め)。
選手もプロモーションを頑張らないといけないですね。昔気質のジムの会長なんかは、練習だけしていればいいという人も多いですけど。でもそれじゃ生活できないですからね。
ショウタイムジャパン設立、でも僕の主戦場はK−1
昨年のトーナメント決勝で対決したペトロシアン(左)の次戦はイッツ・ショウタイムジャパンに決まった 【t.SAKUMA】
日菜太くんが(ジョルジオ・)ペトロシアンと戦うというのは、今回のクラウス戦を決めるにあたって刺激にもなりました。僕はショウタイムジャパンに対して、何もわだかまりはありませんから。ただ、僕は主戦場はK−1なので。K−1があるなら、K−1が一番だと考えてはいますけどね。これまでK−1(の大会)がないからいろいろ出ているだけで。K−1があるうちはそこが主戦場です。僕は一回、全日本キックを裏切っているんで。もう、そういうことはしたくないですね。
――裏切りでしたか。
裏切りです。
05年2月。佐藤は全日本キック大会メーンイベントに出場の翌日、同団体を電撃退団。この後、K−1へ参戦する 【スポーツナビ】
すごいですよね。刺激になります。ただ、まだ日本で完結していますよね。ここから対世界を見たいですね。昔の全日本やNJKFには対世界があったじゃないですか、小林聡対サムゴー・ギャットモンテープとか、鈴木秀明対アタチャイ・フェアテックスとか、加藤督朗対ジャン・スカボロスキーなんか。今のKrushにも対ムエタイや、対ヨーロッパを見てみたいですね。そういうワクワク感を期待していです。