“異色のクローザー”西武・牧田は成功するか!?=独自の投手哲学「打者をもてあそびたい」

中島大輔

緊張の中での初セーブ「足が震えていました」

プロ初セーブを挙げた西武・牧田(右)。左は中島 【写真は共同】

 2万5033人の大歓声に包まれて本拠地・西武ドームのマウンドに上がった新クローザーは、極度の緊張を感じていた。6月26日の西武対楽天、5対4と1点リードで迎えた最終回、ルーキーの牧田和久はプロ入り初のリリーフ登板を果たした。

「足が震えていました。でも、いつも通りの打ち取り方でしたね」
 ポーカーフェイスで冷静に振る舞った牧田は、先頭打者の高須洋介を2球でショートゴロに切って取る。続くガルシアは5球でサードフライ、代打の中村真人を2球でショートゴロに打ち取り、わずか9球でプロ入り初セーブを記録した。
 最後の打者となった中村は、牧田との対戦をこう振り返っている。
「先発のときより球が走っていました。体感で速く感じましたね。ストレート2球で意表を突かれ、詰まらされました」
 先頭打者の高須は、「2球しかなかったからよく分からない」と言う。正直な感想だろうが、これぞ牧田の真骨頂だ。自分のペースでテンポ良く投げ込み、少ない球数で打たせて取る。打者はリズムをつかめぬまま、アウトになっているのだ。

一般的なクローザーと違い、熟練の投球術で打ち取る

 “強心臓”で知られる牧田だが、クローザーとしてマウンドに上がる前には不安を感じていたと言う。
「プロの抑えは、球が速くて変化球が切れて、空振りを取るイメージ。自分の球威でどのくらいできるかと思っていました」
 牧田の言うように、一般的なクローザーは球威のあるストレートと空振りを取れる変化球で打者をねじ伏せていく。ソフトバンクの馬原孝浩やオリックスの岸田護、ヤクルトの林昌勇が典型的なタイプだ。

 一方、アンダースローの牧田はまるで対称的なスタイルを誇る。ストレートは130キロ台で、力で打ち取るピッチャーではない。球種はシンカー、カーブ、スライダー、シュート、チェンジアップと豊富だが、ウイニングショットと呼べるようなボールは見当たらない。それでも打者を打ち取ることができるのは、熟練の投球術を持つからだ。

 楽天の中村は、守護神・牧田に嫌なイメージを植え付けられたと言う。
「印象はクローザー向きですね。牧田はクローザーで使った方が、力を発揮するボールを投げています。球種を絞らないと打てないので、考えて打席に入らないといけない。先発のときは終盤になるとスピードが落ちていたけど、クローザーではストレートも変化球も切れていました」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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