原口元気、スーパーサブから先発への挑戦=関塚ジャパンでの正念場となるクウェート戦
予選敗退の屈辱、世界大会への思い
持ち味のドリブル突破に加え、ゴール前での怖さを身につけた原口 【Getty Images】
当時のユース代表に飛び級で抜てきされた原口は、U−20W杯への出場権を懸けた韓国との大一番に出られず、0−3の惨敗をベンチから見守った。この悔しさを忘れたことは今までなかっただろう。2年後の10年AFC・U−19選手権(中国)も、浦和レッズと日本サッカー協会の招集に関する食い違いなどから、最後までユース代表に呼ばれないままだった。そんな過去があるからこそ、本人は「自分は世界大会に出たことがないし、ぜひ出たい。アジアユースで負けているからこそ、そういう気持ちが強い」と熱い思いを打ち明ける。
とはいえ、原口のポジションである2列目は、誰もが認める大激戦区。昨年11月のアジア大会(広州)優勝に貢献した東慶悟(大宮)、山崎亮平(磐田)を筆頭に、A代表経験のある金崎夢生(名古屋)、Jリーグで活躍する宇佐美貴史(G大阪)、清武弘嗣(C大阪)、欧州で一躍名を馳せた宮市亮(フェイエノールト)、すでにA代表に定着している香川真司(ドルトムント)らタレントがひしめいている。生き残るには「目に見える結果」を出すしかない。
その覚悟をピッチ上で示すかのように、今季の原口はゴールへの貪欲(どんよく)さを前面に押し出している。4月24日の名古屋グランパス戦を皮切りに、ここまで4ゴール。この数字は永井謙佑や大迫勇也、山崎、清武を上回り、ロンドン世代でトップに立っている。
短期間でプレーの幅を広げる原口
「真ん中だといっぱいボールを触れるから面白い。自分はシュートを打てる方だと思うんで、ゴールを狙ったり、ワンツーとかいろいろ駆け引きをしたら、必ず崩せると思う」と語り、本人もかなり手ごたえをつかんだ様子だった。
短期間でプレーの幅を広げている原口を関塚監督も前向きに評価する。今月10日のアジア2次予選・U−22クウェート戦のメンバー発表の際、指揮官は原口をあえてFWに登録し、「FWに近いところでのプレーが彼の特徴。守備もできるし、動きの質も高く、パスもできる。中盤から前で幅広く仕事をしてほしい」と注文をつけた。選手個人についてあまりコメントしたがらない関塚監督が、このような話をするのは異例中の異例。それだけ期待の大きさをうかがわせた。
しかしながら、19日に行われたクウェートとの第1戦、原口が先発の座を確保できるかは微妙だった。というのも、関塚監督の中ではアジア大会優勝メンバーに対する信頼度が絶大だからだ。原口が2列目左に入るなら山崎、トップ下なら東からポジションを奪わなければならない。しかし湘南との練習試合でも1本目は永井、東、山崎らが起用され、原口は2本目。状況はやや厳しいと見られた。
そんな矢先の17日、エースの永井が左足首をねんざし、第1戦への出場が難しくなった。傑出した決定力を誇る快足FWが抜けるとなれば、攻撃力ダウンは否めない。そのマイナス面を克服するためにも、湘南戦の2本目のように、1トップの大迫とトップ下の原口をタテに配置し、攻めの厚みを持たせた方がいいのではないか。そんな見方も浮上し、原口のスタメンへの期待もにわかに高まった。
「誰が出るか分かんない状況なんで、出た選手をうまく使うことが大事。みんなでしっかり話し合ってやれば、いいゲームができるんじゃないかな。うまく合わせて自分の良さを出していけたらいいですね」と本人も明るく語るなど、メンバー入りを熱望していた。