ジョコビッチ、マレー、世代交代なるか!?=ウィンブルドンを盛り上げる新王者候補

内田暁

新時代到来の高揚を感じさせる一戦

新王者候補のジョコビッチはウィンブルドンで世代交代なるか!? 【(c)Getty Images】

 思えば2011年のテニスシーンは、この二人の頂上決戦で幕を開けた。
 ノバック・ジョコビッチ(セルビア)と、アンディ・マレー(英国)。ともに1987年生まれの24歳は、“フェデラー、ナダル時代”を脅かす新王者候補であり、友人であり、互いを強く意識するライバルでもある。

 誕生日がわずか1週間違いであるマレーとジョコビッチが初めて対戦したのは、“ひと昔”の月日をさかのぼる13歳の日のことだ。
「スコアは確か、6−0、6−1で僕の勝ちだったはずだよ」
 そうマレーがいたずらっぽく笑えば、「あれは、即行で忘れたい心の傷さ」とジョコビッチが苦笑する。

 その初対戦から、10年。
 互いに異なる道をたどり頂点へと肉薄した二人の足跡は、今年2月、全豪オープンの決勝戦で交錯する。それは、ロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)が交互に賜杯を掲げる“2強時代”をやや食傷気味に感じていたファンたちに、新時代到来の高揚を感じさせる一戦であった。

 ところがその決勝後、両者が歩んだ道程は、皮肉なまでのコントラストを描くことになる。マレーとの対決を制し二つ目の全豪タイトルを手にしたジョコビッチは、以降も連勝街道を驀進(ばくしん)し、その快進撃は先の全仏オープン準決勝まで途切れることはなかった。ナダルの「現在、最も強い選手」というジョコビッチ評を待つまでもなく、この半年に限って言えば、彼こそが最強なのは万人が認めるところだろう。

ライバルとの激戦で復活

 片や、全豪オープン決勝で敗れたマレーの苦悩は、その後約3カ月間も続いていた。本人もほとんど記憶にないという、3大会連続初戦敗退という異常事態。「練習での調子は悪くない。それなのに、試合になると何もかもが上手くいかない」と、本人も困惑と焦燥を隠さなかった。

 そのようなマレーがベストフォームを取り戻す契機となったのは、やはり自他ともに認めるライバル、ジョコビッチとの一戦だった。全仏オープンの前哨戦となる5月のローマ大会準決勝で、最終的にこの大会を制したジョコビッチからマッチポイントを奪う大熱戦。この試合で自信を得たマレーは、全仏オープンでは足を負傷しながらもベスト4へと進み復調を印象づけた。
 そして2週間前のクイーンズ大会では、アンディ・ロディック(米国)やジョー=ウィルフリード・ツォンガ(フランス)ら、芝を得意とする選手を破って今季初優勝。前哨戦での勝利を手土産に、マレーは地元開催となるウィンブルドンへと乗り込んできたのだ。

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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