「新世代・男子新体操」の変革期=ドラマ『タンブリング』のリアルな世界

椎名桂子

「新体操王子」永井直也(青森山田高校)の台頭

永井直也は表現の面に卓越した才能を持つ 【小林隆子】

 また、表現の面に卓越した才能を持った高校生も現れた。永井直也(青森山田高校)だ。今大会2位の選手だが、昨年の全日本ジュニアチャンピオンでもある。彼の演技はジュニアのころから、従来の「男子新体操」とは一線を画していた。スポーツというよりはむしろ舞踊に近い、そう感じさせるだけの美しさと表現力をもった選手だったのだ。

 その永井は、今年、男子新体操の名門・青森山田高校に進学した。その結果、生来の美しさに加えて、タンブリングも強化され、1年生ながら2位に躍進した。昨年のユースでは16位だった選手だ。これからどこまで伸びるのか、おおいに期待できそうだ。

今大会3位の畠山可夢も、すらりとした長身から繰り出す高さのあるタンブリング、果敢な手具操作は見事 【小林隆子】

 今大会では、一騎打ちの様相だった臼井と永井だが、それぞれに持ち味が大きく違う。そして、そのことをお互いに認め合っている。臼井は永井のことを「自分にはない線の美しさを持っているので学びたい」と言い、永井は、「臼井くんは、タンブリングが強いし、演技の流れがいいし、ミスしない。本当に強いと思う。」と言う。ユース世代のトップ選手でありながら、有頂天にはさせてくれないライバルがいる。そんな男子新体操の現状が、ますます選手たちを成長させるに違いない。

 この2人だけではない。今大会3位の畠山可夢(袖ヶ浦高校)も、すらりとした長身から繰り出す高さのあるタンブリング、果敢な手具操作は見事だった。4位の平野泰新(青森山田高校)は、従来から持っていた美しい線に加えて力強さが増し、シャープな演技になってきた。

団体競技でも、地殻変動の兆しあり! インターハイに要注目!

埼玉栄高校が王者・青森山田高校に肉薄 【小林隆子】

 また、同時に開催された第2回男子団体選手権でも、埼玉栄高校(今大会2位)が王者・青森山田高校(今大会1位)に肉薄した。数年来、ダンス的な新体操で時代を引っ張ってきた青森山田だが、埼玉栄はまたそれとは大きく違った路線に挑戦し、完成度を高めてきた。7月31日から青森県で開催されるインターハイでは、個人、団体とも白熱した戦いになりそうだ。

 男子新体操に打ち込む高校生を描いたテレビドラマ『タンブリング』の放送から1年になるが、リアルな世界では、まさに「お楽しみはこれから」だ。

<了>

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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