サッカー界の汚職とイングランド=FIFAとFAの対立の歴史
対立が表面化したのは初めてではない
ファウリン(写真)を不当に獲得したQPRには罰金こそ科したものの、勝ち点ははく奪せず。FAは自身のテリトリーでは異なる物差しを使っている 【Getty Images】
しかしながら、イングランドのメディアは66年大会で起こった出来事についての言及だけは極力避けてきた。当時非常に強く、開催国イングランドの初タイトル獲得を脅かす存在だった南米大陸のアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイは、不当な形で敗退に追い込まれた。
大会2連覇中のペレを擁するブラジルは、レフェリーにほとんど見向きをされぬままグループリーグで衝撃の敗退を喫した。ウェンブリーで行われた準々決勝イングランド対アルゼンチン戦の勝敗は、アルゼンチンのキャプテンであるアントニオ・ラティンがドイツ人レフェリー(ルドルフ・クライトライン)に命じられた不可解な退場で決まった。この判定を検証すべく、試合が長時間中断されたことがきっかけとなり、70年のメキシコ大会ではゲームの迅速化を図るべく、史上初めてイエローカードとレッドカードが導入されたのだった。
別の準々決勝、ドイツ対ウルグアイ戦では、イングランド人レフェリー(ジェームズ・フィニー)がウルグアイのトロチェとシウバを退場処分とすることで、欧州の同胞にアドバンテージを与えた。そして決勝では、ゴールラインを割っていないように見えたジェフ・ハーストの疑惑の決勝点が認められるという形で、そのドイツがイギリス製の薬を飲まされることになった。
自身のテリトリーでは異なる物差しを使うFA
QPRの株主の中には、F1界の重鎮であるバーニー・エクレストンとフラビオ・ブリアトーレ(彼は鋼材業界の成金ラクシュミー・ミッタルに持ち株の20%を売却した)、そしてスペイン元首相ホセ・マリア・アスナールの義理の息子アレハンドロ・アガグが名を連ねる。
これらの株主にとっては罰金の支払いなど大した問題ではないだろう。うわさされていたように勝ち点のはく奪という形で処分が科されていれば、おそらくチームはもう1年チャンピオンシップ(2部)でプレーすることになっていたのだから。
どうやらFAは、自身のテリトリー内においては国際レベルのそれとは全く異なる物差しを使っているようだ。
<了>
(翻訳:工藤拓)