サッカー界の汚職とイングランド=FIFAとFAの対立の歴史
わいろを要求してきたサッカー界の重鎮たち
W杯招致投票で惨敗したイングランドは、関係の悪いブラッター氏(写真)が当選を目指すFIFA会長選の棄権も視野に入れている 【Getty Images】
スイスのチューリヒでデイビッド・ベッカムが落胆の涙を見せた後、元FA(イングランドサッカー協会)会長のデイビッド・トリーズマンは、南米サッカー連盟のニコラス・レオス会長、ブラジルサッカー連盟のリカルド・テシェイラ会長、北中米カリブ海サッカー連盟のジャック・ワーナー会長、FIFA実行委員会のメンバーであるウォラウィ・マクディらサッカー界の重鎮が、イングランドに投票する見返りとしてわいろを要求してきたことを英国の下院議会で証言した。
アンドリュー・ジェニングス著『タルヘタ・ロハ(レッドカード)』の中で数々の汚職事件への関連が伝えられたトリニダード・トバゴのワーナーは、母国に教育機関を設立するための資金として280万ユーロ(約3億2500万円)を要求。同様に、レオスは“サー(ナイト)”の称号を、マクディはプレミアリーグのテレビ放映権、そして母国タイ代表とイングランド代表の親善試合開催を求めた。またトリーズマンによれば、テシェイラは誰よりもダイレクトに「わたしの元に来て何を提供できるか言ってみろ」と言ってきたという。
イングランドのスポーツ大臣ヒュー・ロバートソンはFIFAに対し、過去に国際オリンピック委員会(IOC)が行った調査と同様の透明性を求めている。1998年に行われた02年ソルトレイク冬季五輪の招致活動において、招致委員会のトム・ウェルチとダイブ・ジョンソンがIOCのメンバーに献金を試みたことが発覚した後、IOCは本格的な調査に乗り出して6人の委員を除名するに至っている。
FIFA会長選の棄権も
18、22年W杯招致選挙の数週間前の時点で既に、FIFAは2人の実行委員に処分を科している。ナイジェリアのアモス・アダムとタヒチのレイナルド・テマリ元オセアニアサッカー連盟会長は、米国の招致委員を装った英紙『サンデー・タイムズ』記者のおとり取材に対し、投票の見返りとしてさまざまな便宜を要求。アダムは50万英ポンド(約6620万円、半額は前払いで)を要求し、テマリはほかの候補から1000万(約8億1500万円)〜1200万米ドル(約9億8千万円)のオファーを受けていると発言していた。
両者はFIFAの倫理委員会から長期の活動停止処分を科されたと言われている。だが、実際はどうだろうか。
ブラッターは前週、複数のメディアに対して遺憾の意を表するとともに、これらの汚職疑惑に対する調査を行うことを約束した。彼の命によりFIFAは『サンデー・タイムズ』に文書を送り、ジョン・ホワイティンゲイルを中心に、イングランドの18年のW杯招致失敗を検証している国会の調査委員会の元に渡った同紙の調査結果を提出するよう求めている。