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FC東京、10人で得た一体感と浮上へのヒント
味スタ決戦! 春の東京ダービー祭り

ダービーマッチの定義

東京VとFC東京によるダービーマッチは0−0に終わった
東京VとFC東京によるダービーマッチは0−0に終わった【Getty Images】

 ハーフタイム、顔見知りのFC東京ファンに「ダービーに勝ったとして何かが変わるだろうか」と聞いた。答えはこうだった。

「変わらないと思う。冷静に考えたら、1/38だし」


 FC東京のGK権田修一が常々言うフレーズは「◯◯に勝ったからと言って、勝ち点6がもらえるわけではない」。4日に行われた東京ヴェルディ(以下、東京V)とのアウエー戦、この日も少し変形してこう言っていた。

「1試合、1試合勝っていくしかない。いきなり勝ち点を多くもらえる試合はないですし」


 換言すると、そのほかの試合と同じ勝ち点しか獲得できないにもかかわらず、ファンとメディアの圧力は抜きん出て高い。それが緊張感のあるいいプレーにつながれば、反対にミスも起こす。意地の張り合いが戦術を凌駕(りょうが)して面白いサッカーにはならず、結果もロースコアに終わったりする。ダービーマッチとはそういうものだと思う。


 権田が戦前に言っていたダービーを表現する言葉は、どの試合でも全力でやっているから、この試合だけ頑張るということではないが、それでもいや応なしにいつもより出力が上がる、というニュアンスの「気持ちが入る試合」だった。


 その意味ではガチガチに守り、走った末の0−0というスコアはいかにもダービーマッチらしいものだった。勝っていないのだからもちろん満足はできない。しかし、難しい状況のアウエーで勝ち点1を取ったことには安堵(あんど)せざるをえない。

 妥当な結果? かもしれない。


 ダービーマッチの結果と、チームの内容が良化するかどうかは別の問題だ。引き分けたから内容が悪く、今後改善される見込みがないのかと言えばそうではない。反対に、この試合に勝ったとしても、それが次節の対カターレ富山戦でいいサッカーができるという担保にはならない。

セザーの退場でFC東京は10人に

 序盤はFC東京が押していた。堅守速攻のFC東京、中盤制圧の東京Vというパブリックイメージとは裏腹に、16分には深い位置からのロングボールというクラシックなカウンターで東京Vの平繁龍一が飛び出し、FC東京の森重真人が個人で止める場面があった。ここまでの時間帯に得点できなかったことでFC東京はペースが停滞、やや東京V有利の状態に落ち着いてしまう。前半のスコアは0−0。共に得点の少ないチーム同士、この時点で引き分けを予想した向きは多かっただろう。


 予想通りに簡単に事が運ばなかったのは、54分にロベルト・セザーがシミュレーションの反則(反スポーツ的行為)でこの日、2枚目のイエローカードを提示され、退場したことにある。

 セザーは前半から活躍できていなかった。ボールを持ったときは囲まれて奪われてしまったし、それ以外ではそもそもボールに触れていない。ボールが出てこなかった。FW個人のパフォーマンスだけではなく、MFとFWのコミュニケーションにも問題があった。

 例えば、鈴木達也はサイドのアタッカーだが、もちろん裏へ飛び出してフィニッシュ、あるいはその前のプレーを狙っていた。しかし、なかなかそういう勝負のパスは出てこない。その状況が続いた上での後半、セザーがせっかく握ったボールを大事にしようとキープしたまま前進したのは納得できる。あのドリブルは期待の持てるものだった。それ自体は悪くはない。

 しかし、キャンプから第1節までの頼もしさが影を潜めたセザーは、倒れることに甘んじてしまった。もし好調な時であれば、しっかりと立って相手ディフェンダーを跳ね飛ばし、シュートを打てただろう。あるいは弱気になっていたのかもしれない。


 セザーが退場してFC東京のフィールドプレーヤーは10人。1人多い東京Vの方が有利だ。1人少なくなったFC東京は定石どおり、4−4−1にしてブロックを形成する。まずは失点をゼロに抑え、可能であれば1点を取りたいという考えであることはよく分かる。守備ではすきを作らず、攻めに転換したときは1人少なくなって増えたスペースを使い、1人ひとりがダイナミックに動く。


 問題は1トップを誰にするかだ。前線守備(チェイシング、相手が進むサイドをどちらかに切る)、ポストプレー、速攻時の裏への飛び出し、シュートといろいろな仕事がある。結局、中盤に谷澤達也を入れて1トップを高松大樹から鈴木達也にしたが、正解だろう。足を痛める心配の少ないコンディション、豊富なスタミナと運動量、突き抜けるスピード、守備意欲の高さ、どれをとっても適任だ。

 最終的には再び鈴木達也をサイドハーフに回し、ペドロ・ジュニオールを投入した。得点を考えてのことだろう。


 11対11ならばストレートに0−0になっていたところ、東京VにもFC東京にも“ウノ・セロ”、1−0勝ちの芽が出てきた。やはりダービーマッチは静かにサッカーをさせてくれない。

 後半ロスタイムには、3人交代済みの東京VがGK土肥洋一の負傷によって10人となり、“自然なイコライジング(均一化)”を施されてしまったのはまるで台本でもあるかのようだった。だが、FC東京が得点するまでの劇的な強制力は働かず、最終的にダービーの熱は均衡して引き分けに落ち着いた。

後藤勝

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWeb/メールマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」(http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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