FC東京は20年前の志で東京Vに立ち向かえるか=味スタ決戦! 春の東京ダービー祭り
東京Vが陥っている中盤症候群
第8節の対ジェフユナイテッド千葉戦の3失点を除けば、残りの2試合は無失点。千葉戦にしても、日本人選手で固めた時間帯の守備は良かった。問題は攻撃にある。
この解決にあたって大熊監督は、攻撃を選手任せにするのではなく、アタッキングサードでの選手の配置など、得点の仕方をある程度ベンチサイドで考えることを示唆している。中盤が自ら得点する意欲を高めることも必要だろう。
一方の東京Vは、6失点の方にどうしても目に行くが、3連敗の原因にはもちろん得点力不足がある。FC東京キラーの飯尾一慶は「ディフェンスを安心させるためにも、先に点を取ることが必要。先に失点して前がかりになり、後ろに負担が来るということの繰り返しなので。失点は全体の問題」と言う。
スペイン代表も回して回して、しかしどこかでFWが飛び出して最終勝負をする、と水を向けると、川勝監督は「そこはちょっと少ないよね」と即答した。それはFWの性格の問題なのか、最終勝負を意図した共通意識のなさが問題なのか、と質問を重ねる。
「共通意識を持たせたいけどやっぱり、才能の部分というか。点を取りたがっている日本人は少ない」
本来ならば、フィリッポ・インザーギのように下がらず我慢しなければ、フィニッシュに必要な力を残し、集中を維持できないはずだ。
「日本人であれば岡崎慎司がそのタイプだが、数が限られている。FWの性格がどんどん中盤型に近づいている」と川勝監督は言う。
「日本の場合、不思議なのは、子供のサッカーを見ていても、いつも中盤のうまいやつがボス。自分のテンポでみんなを集めてボールを動かす、というのが大人でも多い」
日本人の中盤志向は今に始まったことではないが、東京Vが中盤症候群に陥っているなら、FC東京が失点する危険性は低くなる。回されても焦らず、それこそ持ち味の堅守速攻を見せるべきだろう。
しかしFC東京も速攻を失って久しい。ともにボール回しに終始して、爽快なフィニッシュが見られない凡戦となるかもしれない。それだけは避けたい。
東京決戦の持つ意味
U−15、U−18からFC東京でプレーしてきた椋原健太は「ダービーはデビューした相手でもありますし、中学のときから負けてはいけないと教わってきた」と言う。育成年代とプロの対東京V戦では何が違うのかと聞くと、「ファンのうるささと取材陣のあおりかな」と答えられた。
椋原と同じくFC東京U−18出身の権田修一は言う。
「そこ(対東京V戦)に対して、変に力みすぎてもいけないと思う。ダービーだから100%でやるわけではなく、いつも100%でやっていると思うし。でも、同じ町で同じスタジアムを使っているクラブ相手には、僕は負けたくない。“ヴェルディだけには負けられない”とあるように、特にユース上がりの僕たち、カジくん(梶山陽平)だったり、(椋原)健太だったり、大竹(洋平)だったり、(阿部)巧だったりという選手は。意識するというよりは、気持ちが入る試合」
意気込んでいつも通りの力を出せないようではいけない。いつも以上の力を出さなくては──とも権田は言った。東京Vの土肥洋一、土屋征夫は「FC東京だからといって特別に意識することはない。相手のことより自分たちのことができるか」と口をそろえたが、ニュアンスは近いのかもしれない。
1991年の志を取り戻せるか
「(東京ガスは)今のヴェルディに似て、カネはないけど夢があるというときだった。なんとかJリーグを東京にという根回しを……」
流転の末、立場は逆転した。今はFC東京を東京Vが仰ぎ見ている。しかしJ2最大戦力“銀河系軍団”とスター扱いされ、その座にあぐらをかくようでは、それこそかつての東京Vのように転落してしまう。
権田は言う。
「J2だからという意識があるうちは、僕らは上に行けない。J1かJ2かに関係なく、目の前の相手にしっかり勝つために、ということを考えなければ。J2だろうとJ1だろうと、相手はその試合に勝つために全力でやってくる。J2だからと言っている時点でリスペクトがない、相手を上から見ていることになる」
お客さま気分はもう終わりにしよう。20年前の志で東京Vに立ち向かうFC東京をこの目で見たい。