内田篤人、高いレベルだからこそ生きる特長=周囲との連動、頭を使って戦い抜く
日本人初のCLベスト4進出
内田(右)は長友との対決を制し、日本人として初のCLベスト4進出を果たした 【Getty Images】
だが、日本にとってはそれ以上に、シャルケの主力メンバーに内田篤人が名前を連ねている、という事実が衝撃的だったはずだ。日本人初のCLベスト4、その金字塔をまさか内田が立てるとは。シーズン開幕当初、これほどの活躍を予想した人はいなかっただろう。
確かに、内田の実績と実力は折り紙付きだ。U−18以降、すべてのカテゴリーで世界大会を主力として経験。前所属の鹿島アントラーズでもクラブ史上初の高卒ルーキー開幕スタメン入りを果たし、話題をさらった。昨年のワールドカップ・南アフリカ大会では試合出場こそかなわなかったが、ここ数年日本で一番ゲームをこなしている選手である。
しかし、その一方で内田はこれまで強烈な印象を残すことはなかった。例えば、長友佑都や本田圭祐のように弁が立ち、さらにピッチ上でもはっきりとしたストロングポイントを持つ選手でもない。香川真司のように、華やかなドリブルを武器に得点に絡むわけでもない。だからこそ、の衝撃がある。
周囲の選手の評価は「頭がいい」「勘がいい」
「ウッチー(内田)はもともと、チームメートがうまければうまいほど生きる選手。インテル戦を見ながら、おれだったらウッチーにあんなにいい感じでボールを持たせられるのかなと考えました。日本代表ではウッチーはあまり目立たなかったりもするので、同じ右サイドでやっているおれのせいなのかなとも思ったり。そういう彼を生かせるパートナーでありたいなと思う。
あの舞台で佑都(長友)とウッチーがやっているのは信じられない気もするけど、やっぱりそのレベルが日本人にとっての普通にならないと。世界ランクももう13位にまで上がっているのだから。あれを見て『自分もあそこでやりたい』っておれも思うし、思っている選手は何人もいるのでは」
岡崎が言うように、内田は周囲との関係によって存在感を示す選手だ。サイドバックというディフェンスのポジションながら、決してフィジカルに長けているわけではない。攻撃面においても、スピードこそあるが、クロスやシュートの精度はもちろん低くはないものの特筆すべきレベルでもない。
だが、鹿島時代やユース代表のころから周囲の選手たちが口をそろえるのは、「頭がいい」「勘がいい」という2点だ。クレバーであるという彼の最大の特長は、4月以降のラングニック新体制下で、これまでよりも有効に生かされているように見える。
例えば、CL準々決勝インテルとの第2戦、内田は自らのサイドに張るエトーを封じてみせた。しかし、本人は至って冷静で、「ワンツーなどで中に入れば味方との関係で、縦に来たらおれが守る。特に話をしたわけではないけれど、言わなくても周りは分かっている」と、自分の1対1の強さを誇示することはない。
「飛び込んでグリグリと行かれるのが嫌だったというか、一番良くないので。向こうは(第1戦の敗戦を受けて攻撃に)出てこないといけないので、守備陣がある程度カウンターを遅らせていければ、仲間たちは戻ってきてくれるし。まあ、ブロックさえしっかり作れれば守れる自信はある。頭を使いながらね」