アルゼンチン代表はマラドーナ色を排除?=コパ・アメリカに向けてチーム作りは最終段階に
進むべき道を見いだす手がかりとなった2試合
米国戦でメッシはバルセロナと同じ“偽センターFW”としてプレー。引き分けたが、チームはうまく機能した 【Getty Images】
3月26日に行われたニューヨークでの米国戦(1−1)、29日のサンホセでのコスタリカ戦(0−0)におけるパフォーマンスは、それぞれ全く異なる印象を与えるとともに、2014年ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会という最終目標に向けて進むべき道を見いだす手がかりとなった。コパ・アメリカはその過程の一大会ではあるが、チームの基盤を固めるため、また旧世代(バティストゥータ、カニーヒア、ルジェリ、シメオネ、ゴイコチェアら)が制した1993年のエクアドル大会以来、18年ぶりに勝者のメンタリティーを取り戻すためには欠かせない重要な大会である。
アルゼンチン代表は開催国としてコパ・アメリカの優勝を義務付けられているが、「最大の目的はW杯である」とバティスタ監督は繰り返し強調している。過去、南米で開催されたW杯では常に南米のチームが制してきた。ただし、ホスト国として優勝が至上命令のブラジルはプレッシャーに苦しむはずだ。逆に隣国アルゼンチンは地理的に近いことから多くのファンの後押しを受け、伸び伸びプレーできると彼は考えている。
さらにアルゼンチンサッカー協会(AFA)は、開催国のブラジルや世界王者スペイン、その他各大陸の王者が集う2013年のコンフェデレーションズカップ出場権を獲得するという意味でも、コパ・アメリカを重要な大会ととらえている。
しかし、アルゼンチンは少なくとも今後2度の国際マッチデーを十分に活用することができないかもしれない。6月1日にはアブジャでナイジェリアのU−25代表と対戦予定。もう1試合はまだ確定していないが、恐らくソフィアでブルガリアと対戦することになりそうだ。いずれもアウエーであり、コパ・アメリカ直前の強化にふさわしいどうかは疑わしい。
アルゼンチンがよりバルセロナに近づくために
アルゼンチン代表を追い続ける多くの識者は、米国戦の前半がここ10年かそれ以上において最高の内容だったと評価している。ひょっとしたら6−0で勝利した2006年W杯・ドイツ大会のセルビア・モンテネグロ戦も同様の評価を得るかもしれないが、あの時の相手はチームに内紛が生じていたことを差し引いて考えた方がいい。
米国戦のアルゼンチン代表はバルセロナと同じ4−3−3のシステムで戦ったが、中盤は珍しい構成になっていた。バティスタ監督は中盤の選手に可能な限りバルセロナのMF(セルヒオ・ブスケツ、シャビ、イニエスタ)と同様の役割をこなすよう要求しているにもかかわらず、起用したのはマスチェラーノ、カンビアッソ、バネガの3人だった。バレンシアで少し前めのポジションでプレーしているバネガを除き、残る2人は攻撃より守備、後方でボールを散らすタイプの選手である。
アルゼンチンがよりバルセロナに近づくためには――プレーのオートマティズムを構築するために多くの練習を費やしているクラブチームと違い、代表チームには時間がないのでもともと難しいことなのだが――少なくとも3人のうち2人はもっと攻撃的なタイプのMFを起用する必要がある。同様に、両サイドバック(米国戦はサネッティとロホ)がもっと攻撃に参加し、さらに敵陣深くまでオーバーラップする必要もある。
ディ・マリア、メッシ、ラベッシが並んだ3トップはタレントを見せつけたものの、作りだしたチャンスのほとんどをゴールに結びつけられなかったのも事実だ。それにはバティスタ監督がペナルティーエリア内でプレーするストライカーを招集しなかった――あれは不思議な決断だった――ことが大きく影響している。イグアインとディエゴ・ミリートが負傷中だったとはいえ、ほかにテベス、アグエロ、サラテ、リサンドロ・ロペスといった選手は招集できたにもかかわらずである。
コスタリカ戦では得点力不足の傾向がより顕著になった。この試合でバティスタ監督は3トップにガイタン、ソサ、パストーレの3人を並べた。つまり4−3−3のシステムで純正のFWを1人も起用しなかったのだ。これはアルゼンチン代表にとって非常に珍しいことだった。